A requiem to give to you
- 成せばなる!(9/10) -



「音素を取り込む……?」



思わず聞き返すと二人して頷かれた。



「え、でも譜術ってフォンスロットを介してやるんでしょ?」

「少し違います。そもそもフォンスロットとは音素の吸収と放出を行う機関です。だから譜術はフォンスロットで音素を取り込み、それから武器や陣を介して術式を組み立てる事で初めて行えるんですよ」

「マジか」



知らなかった、と言うとアリエッタは首を傾げた。



「この前イオン様が言ってたよ」



そう言えば言っていた気がする。



(聞き漏らしだなんてどんだけ焦ってんだあたしは……)



あちゃー、とあの時の自分を呪いたくなった。その少しの聞き漏らしで暴走を起こしていたなど、恥ずかしくてあの緑の導師やふざけた幼馴染みは絶対に言えない。



「まぁ、とにかく原因がわかったのなら話は早いな!」

「じゃあ……!」

「うん、早速……






















音素の取り込み方を教えて下さい」



直後、地面に二つ程衝撃が走った。どうやら今の発言にアリエッタ達が転けたらしい。



「ちょ、そんなギャグ漫画みたいな転け方しなくても良いじゃんかー!」

「いや、つい足が滑ってしまって……」

「蹴るぞ」

「いだだだだだだっ!? 踏んでる! それ踏んでるから!」



だって踏みやすい位置にお尻があるんだもん。そう言って足を外すとディストは素早く立ち上がってずれた眼鏡を指で押し上げて直した。



「……全く、前々から思っていましたが足癖が悪いですね!」

「悪かったな。これでも直そうとしてるんだよ! ……それより、音素を取り込むのって具体的にどうすれば良いんだよ?」



恐らくフォンスロットの様なモノと言うのも方法は同じだろう。ならば上手くその方法を会得出来れば、今度こそ術が扱えるようになるかも知れない。



「想像するの」



答えたのはアリエッタだった。



「想像?」

「レジウィーダ、音素を感じる事は出来るから。だからあとは感じたその音素を自分の中に入れる想像をするの」

「自分の中に……入れる」



言われて、自然に目を閉じていた。

































「! これ……」



言われた通りに音素を入れる想像をすると、辺りを漂っていた音素が自分の中に流れ込むような感じがした。



(それに……熱い……)



取り込んだ音素はまるで自分の中で熱を持ち、段々とその力が大きくなっていくのがわかる。

それからは自然にレジウィーダの指は動いていた。指の通った道が淡く、紅い光の線が走り陣を結んでいく。同時に、頭の中に浮かんだ言葉を紡いだ。



「燃え盛れ、赤き業火よ! ―――イラプション!!」



途端、陣は光と共に弾けレジウィーダ達の目の前で地が割れ、その隙間から真っ赤な炎が勢い良く噴火した。



「………………」

「レジウィーダ!」



アリエッタが嬉しそうに抱き着いて来た。レジウィーダは呆然としながらも、自身の拳に力を入れて震わせていた。



「……で……………


















出来たあああああああああああっ!!」



あまりの嬉しさに飛び上がる勢いでアリエッタを抱き返した。



「ウッソ、マジで出来ちゃったよ!?」

「おめでとう、です!」

「うー……ありがとうー!!!」



ワイワイと二人で喜んでいるのを傍目に、一連を見ていたディストがやれやれと肩を竦めて苦笑していた。



「騒がしいですねぇ………私はもう帰りますからね」



喜びにはしゃぎ合っているレジウィーダ達には聞こえなかったが、ディストは気にせず計測器をポケットにしまうと椅子に乗って飛び去っていった。


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