A requiem to give to you- 成せばなる!(6/10) -
再び一人になったレジウィーダは教会内を歩いていた。
「"フォンスロットに似たようなモノ"を使いこなす為にはどうすれば良いんだろう……」
うーん、と先程から考えてはいるものの、中々解決策は見付からない。間違いなくに何か知っているであろうグレイから話を聞ければ一番なのだが、あいつの事だからきっと教えてはくれないだろう。それにフィリアムが言っていた通り自分の為にならないからその方法は却下だ。
「レジウィーダ!」
名前を呼ばれると同時にドンッ、と背中に小さな衝撃と共に何かが抱き着いてきた。
「!? ……アリエッタ?」
「はい、アリエッタです」
一瞬ビクリと肩を揺らしたが、直ぐに落ち着いて首だけを後ろにやると、アリエッタが可愛らしく微笑んでいた。出会った最初こそ警戒されていたが、この間の一件以来大分仲良くなったと思う。今ではオールドラントフレンズ第一号だった。レジウィーダはそんな彼女を抱き締めてしまいたい衝動を抑え、どうしたのかを問いかけた。
「休憩中だから、お散歩していたの。そしたらレジウィーダがいたから」
だから声をかけてみた、と。
「アリエッタ…………やっぱりメッチャ可愛いわーv」
結局アリエッタを抱き締めた。ギュウギュウと締められた為、浮いた手足をパタパタさせていた。それがますます可愛くて仕方がなかった。
「レジウィーダ、レジウィーダ」
「なあに?」
「イオン様がね」
彼の名が出た途端、レジウィーダの動きが止まった。その隙に腕から脱け出したアリエッタが続きを言った。
「『レジウィーダは今頃必死こいて術の練習をしているだろうね。なんなら君が教えてあげなよ』って言ってたの」
「何ですと……?」
ピクリ、と米神が震えた。
「よくわからなかったけど、アリエッタもレジウィーダのお手伝いする?」
アリエッタは長い間魔物と共に暮らしていたと言う。そんな彼女にイオンが言葉を教えたらしい。まだ少し辿々しさが残るが、僅か数年でここまで喋れるようになったのはすごい事だった。イオンが言っていた事はともかく、譜術のエキスパートである彼女からの申し出は実にありがたい。
「じゃあさ、少しだけ付き合ってくれないかな?」
そう頼むとアリエッタは元気よく頷いた。
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
本日三度目in中庭。着くなりレジウィーダは早速とばかりにアリエッタに譜術をやってくれるように頼んだ。
「何でも良い?」
「うん。アリエッタの得意な術で構わないから、やってみて欲しいんだ」
「わかった、です」
頷くやアリエッタは腰に着けていた縫いぐるみを取り出して掲げ、集中した。
「歪められし扉を開かん……──ネガティブゲイト!」
縫いぐるみに集まっていた音素が弾け、目の前に闇の譜術が放たれた。
アリエッタに譜術をやってもらったのには二つの理由がある。一つは譜術を行う際の型を見る事。そしてもう一つは音素の流れを掴む事だった。音素を感じる事自体は既に出来る。しかし、その流れを掴む事は正直まだ難しい。もしかしたらそこにヒントが隠されているのではと思い、今回アリエッタに頼んだのだった。
「どう、ですか?」
術発動直後の反動から動けるようになったアリエッタがレジウィーダに問う。
「うん、
全然わかんないや」
そう言うとアリエッタは盛大にずっこけた。
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