A requiem to give to you
- 成せばなる!(5/10) -


術の効果が切れ、大量にあったピコハンは跡形もなく全て消え去った。



「すごっ……」



レジウィーダは最早それしか言えなかった。まさしく雨のように降り注ぐピコハンの中で詠唱した事も確かにすごい。しかしそれよりも全く性質の違う術を何の反発もなしに譜術で鎮めた事は前代未聞だった。普通なら爆発の一つ、起きてもおかしくはない。



「大体、わかった」



フィリアムはそう言うと、その言葉に首を傾げるレジウィーダの前に来た。



「わかったって、何が?」

「術が制御できない理由」

「本当!?」



驚きのままに訊くと彼は一つ頷いて説明した。



「今アンタの使ったその力と、アンタの中のフォンスロットが反発し合って暴発してる。だから威力はすごく高いけど、その分制御が困難になる」



何故あれだけでここまでわかったのか。しかも音素とは違うエネルギーを使った事を疑いもせずに言い当てた。これはある意味彼の才能なのかも知れない。

だがしかし、今彼は妙な事を言っていなかっただろうか。



「ん……? でもあたしにはフォンスロットはない筈なんだけど」



そう言うとフィリアムはもう一度頷いた。



「それは兄貴も言ってたから知ってる。でもアンタも兄貴もフォンスロットはないけれど、限り無く似たようなモノがあるみたい」



兄貴とは恐らくグレイの事だろう。色々とツッコミ所は沢山あったが一先ず抑え、先程彼の言った"フォンスロットに限り無く似たようなモノ"が気になり、思考を巡らせた。



「フォンスロットに似たようなモノ……。つまりそれを上手く使いこなせれば、あたしにも術が出来るって事?」

「出来る。……ただ」



そこまで言ってフィリアムは少し言いづらそうにレジウィーダから視線を外した。



「その、このままだとアンタには使いこなせない……と思うよ」



最後の方はかなり小さな声だったが、結構キッパリと言い切られてしまった。レジウィーダはショックが隠しきれなかった。



「な、なぜに……?」

「言わない」

「えー……イジワルしないで教えてよ」

「だって、言ったらアンタの為にならないから」



だからごめん、教えられない。



「うーん……わかった。何とか自分で探してみるよ」

「うん。………………あ」



フィリアムは小さく声を上げて思い出した様に言った。



「火」

「ひ?」

「アンタの主属性」



これ以上は教えられないけど、これだけなら……と、フィリアムはレジウィーダの主属性を教えてくれた。それだけでも十分嬉しかった。



「ありがとう! これをヒントに頑張ってみるよ!」



そう言って笑うとぎこちないながらも小さな笑みが返ってきた。


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