A requiem to give to you- 成せばなる!(4/10) -
修練場のど真ん中で大注目を浴び、何だか居たたまれなくなったレジウィーダは再びフィリアムを伴い中庭へと来た。先程までそこにいたアッシュの姿はない。
「流石にもう戻ったかー」
「何が?」
「紅髪デコピンな少年Aが」
笑いながらそう言うと(アッシュが聞いたら殺されそうだ)フィリアムはますますわからない、と言いたそうに首を傾げた。そんな彼の様子に苦笑が漏れた。
「まぁ、細かい事は気にしないってことで!」
「うん……?」
わかってるのいないのか、頷いたものの何故か疑問系になるフィリアムにレジウィーダは思わず口許を手で押さえた。
(あぁああ……可愛い、何この生物! さっきから思ってたけどホント可愛すぎだろコンチクショー……って、あたしと同じ顔やないか。どんだけナルシーなんだっての。あ、でも同じ顔でもここまで違うなんて……うん、そう! 元々違うんだ。この子はきっと人間の姿をしたウサギか何かなんだよ。それか他所の星の子とか……ああって何言っての、あたしかなりキモいわ)
悶絶しながら心の中でノリツッコミみ繰り返す様子は端から見たら何とも怪しい光景だろう。現に今、それを目の前にするフィリアムは若干……いや目に見えて引いている。
「あのさ……大丈夫、か?」
頭が、とまでは流石に言えなかったらしいが、そう思ってるのは明らかだった。取り敢えずそんな福音は聞こえなかったフリをしてレジウィーダは親指を立てた。
「おうともさ! バッチ来いだぜヘイ!」
(全然大丈夫そうに見えないんだけど……)
本気で心配になってきたフィリアムだったが、本人も大丈夫だと言っている事なので取り敢えずスルーする事にした。
「それで術の事なんだけど」
「おっ、そうそうそーだった!」
思い出したと言った様子にフィリアムが溜め息を吐きたそうにしていたが気にする事なく「お願いします!」と頭を下げた。
「……じゃあ、まずどんな物か見てみたいから何か術を打ってみて」
その言葉にさっきまでの勢いはどこへ行ったのか、レジウィーダは笑顔のまま固まってしまった。
「あー……えーとっすね……」
実の所、最初の一回以来術は使っていない。とは言うものの、あの一回が相当酷かった為、下手にやれば周りに被害が及びかねない。だから自重していたのだ。そうとは知らないフィリアムはそんな不振な様子の彼女に首を傾げるものの、何も言わずに待っていた。
「う、……どうなっても知らない、よ?」
自信なさげにそう前置きして、意識を集中する。
「エナジーコントロール」
周りにある音素を集め、マナに変える。そして陣を描き、術式を形成していく。
「ピコレイン!」
最近知った術の名を紡ぎ出すと同時に陣は弾け、空からはピコハンが雨のように降ってきた。………が、
「ぎゃーっ! ちょ、こっち!?」
「わっ!?」
予想外にも術は放った本人やフィリアムにも降りかかった。しかもこれは譜術ではない為、味方識別《マーキング》機能なんて物はない(あってもどの道彼女にはまだ出来ないが)
「……くっ、"光の槌よ、全てを打ち砕け!!"」
相変わらず止めどなく落ちてくるピコハンを避けながらフィリアムは何かの詠唱を始めてた。
「フィリアム?」
「いけっ……───ミラクルハンマー!!」
その瞬間、空中から巨大なピコハンが現れ術の発生源ごとレジウィーダのピコハンを叩き潰した。
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