A requiem to give to you
- 進展を齎す風(6/6) -



(うわは、可愛いー……v)



イオンと、彼と手を繋ぎ反対の手で大きなぬいぐるみを抱き締めてとことこと歩いていくアリエッタの姿はとても微笑ましい。そんな二人をどこぞの変態親父よろしくだらしない顔で見上げていたレジウィーダは、実は性格に似合わず可愛いものに目がない。

しかし、それだけならまだ良いが、彼女にはちょっと困った難癖がある。それは………



「あーもうっ、













君たち可愛すぎるーーーーv」

「!?」

「きゃっ」



すぐに対象へと手を出してしまうのがその一つだった。

急に後ろから抱き着かれた二人は驚きを隠せず硬直し、扉の前にいた兵士たちも突然の事に咄嗟に武器を構え警戒した(そこら辺は流石軍人と言ったところだろう)



「貴様っ、導師から手を離せ!!」



当然の如く人質に取られたと思われたのだろう。兵士が間合いを取りつつレジウィーダへと叫ぶ。しかし当のレジウィーダはと言うと、兵士の言葉の中にあったある単語が気になった。



「ん? ……導師??」

「あ、はい。僕が導師です」



レジウィーダの反応に訝しみながらも律儀に返事を返したのはイオンだった。そこで初めてまともに彼の顔を見たレジウィーダは先程の彼らと同じ様に硬直した。



「あ、れ………君……」



やっとの思いで声を出したかと思えば抱き着いていた腕を解き、代わりにイオンの顔を確かめるようにペタペタと触った。



「あの………僕の顔に何かあるんですか?」



何かある云々以前の問題だった。あまりにも失礼極まりない行動に兵士達はあわあわと焦り、アリエッタも何が何だかわからず心配そうにイオンを見ていた。



「…………あー、そっか。君が……うん」



レジウィーダは納得したようにそう言うと、手を離して一人考え始めた。そんな彼女にイオンは考えの読めない表情で見ていたが、ふと、足下に落ちている紙に気が付いた。



「……そう言う事、ね」

「イオン様?」



紙を拾い見たイオンは小さく笑い、それに気が付いたアリエッタが問い掛けた。



「アリエッタ」

「はい、です」



その呼び掛けだけでわかったのか、アリエッタはコクンと一つ頷くと大きな生き物の方へと行った。



「レジウィーダ・コルフェート殿」

「? あれ、何故にあたしの名前を……















あ」



ヒラヒラとイオンが見せるその手の紙は正しくあの入団許可証。成りは子供だがこの人はあくまでも導師。一応、ここダアトで一番偉い人。流石にまずいと思ったのか、レジウィーダが苦い笑顔で固まっていると、イオンはにっこりと笑って口を開いた。



「少し、そこまでお付き合い願えますね?」



そこってどこやねん。しかも願えますねって明らかに強制呼び出し的なもので、レジウィーダは嫌な予感がした。






そしてそれは的中するのだった。



「うぉぅっ!?」



急に視界が回ったと思えば、上からはアリエッタの声が聞こえた。



「イオン様も……乗ってください」



乗ってくださいとは、恐らく……否、間違いなくあの大きな生き物だろう。そこでレジウィーダは漸く自分があの大きな生き物に咥えられている事に気が付いた。



「じゃあ、行きましょうか」

「行きます」

「え゙……いや、ちょっと待って。行くって一体どこへってかこの体勢つら……うわぁあぁああっ!?」



レジウィーダの抗議の声も虚しく、大きな生き物は元気よく階段を一気に飛び降り、教会とは全く逆方向へと駆け出した。後ろの方で兵士達のイオンを呼ぶ声が聞こえたが、レジウィーダに気にしている余裕はなかったのだった。












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