A requiem to give to you
- 家眷と花瞼の姫君(5/6) -



タリスとナタリアが中庭に戻ると、ルーク達は何やら花壇で何かをしているようだった。



「あら、四人して何をしているの?」



タリスが四人訊ねると、ガイが逸早く振り返った。



「タリス! それにナタリア様も。仲直りされたんですね」



その言葉に二人は顔を見合わせて笑った。どうやら大丈夫のようだ、とガイは密かに安堵の息を漏らす。



「それで、何をしていらっしゃるの?」



ナタリアが再び同じ質問をするとしゃがんで何かをしていたヒースとルークが立ち上がり、ルークは持っていた可愛らしい柄のプラスチック製のバケツを無言で二人に見せた。それにしても何とも彼には不似合いである。



「ペールさんが花壇の空いたスペースにアダルベレスの花の種かもう一つの花の種のどっちを植えるかを悩んでいたから、アダルベレスの花の種をこのバケツに植えて、もう一つを花壇に植えたらどうだって話になって皆でやってたんです」

「ルークもやってたの?」



意外そうにタリスが問うとルークはブスッとした顔になりそっぽを向きながら言った。



「……母上が、この花好きだからよ。どうせあまり外に出れねーんなら、部屋に置いておいた方が良いと思ったから……」

「ああ、親孝行ってコトね」



良いとこある〜と言うとルークからは「茶化すなっ」と返って来た。それを今まで見ていたペールは面白そうに笑うと手に持っていた蕾がたくさん付いた花の苗が植えてある小さな植木鉢をルークに手渡した。



「ルーク様、これをお忘れですよ」

「お、おう……」

「それは?」



その問いにルークを除く三人はそれぞれ意味深に笑うと目線を逸らした。訳がわからずに疑問符を浮かべていると、ルークはナタリアの前にそれを突き出した。



「え………」

「…………」



戸惑いを隠せずに植木鉢とルークを交互に見るナタリアと何も言わない(と言うより迷っている)ルーク。ガイが彼の後ろで「おいおい」と苦笑しながら呟く声が聞こえる。


「…………」

「……あの、ルー…――」

「これ、………………やるよ」

「わたくしに?」



鉢植えを受け取りながらそう言うとルークは小さく頷いた。



「……ペールの話じゃ、春先まで楽しめる花らしいぜ。だから……その、よ」

「………………?」

「春になったら今度は一緒にそれに何か植え、ねぇか……なんて……」










(何て言うか………ヘタレね)

(ヘタレだな)

(まぁ、ルークだからなぁ)

(まだまだ青いですなぁ)








「聞こえてんぞソコッ!」



コソコソと話し合うタリス達にルークは耳まで赤くして盛大にツッコミを入れた。すると今度はナタリアが小さく噴き出した。



「な、何だよ!? お前まで、笑う事ねぇだろ……」

「ふふっ……いえ、ごめんなさい。貴方があまりにも……何でもありませんわ」



ちぇっ、と不貞腐れたように舌を打つルークにナタリアは笑いを収めると、彼の名前を呼んだ。



「ルーク」

「何だよ」

「春が…………楽しみですわね」









暫くして、ファブレ婦人の部屋には小さな芽の出た可愛らしい柄のプラスチック製のバケツが飾られた。












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