A requiem to give to you- 笑劇と衝撃の庭(4/5) -
スコーン、と言う音を立てながらルークの足元に転がったそれは……
「バケツ?」
何とも可愛らしい柄のプラスチック製のバケツだった。
「うおぉぉ………」
余程当たり所が悪かったのか、ルークはバケツの当たった箇所を押さえ、縮こまりながら呻いた。そんな彼の後ろに静かに現れたヒースは何処と無く不機嫌そうに溜め息を吐く。
「馬鹿な事を言ってるんじゃない。それにタリスも、誤解を招くような反応を返すな」
「あら、面白かったのに」
「面白くない」
間髪入れずに軽く睨んで返すと、タリスはほほほと笑ってそれを流した。
「いってぇ……。じゃあ、何でタリスはヒースの裸を知ってるっつーんだよ」
「ルーク、話の趣旨が微妙に変わってるぞ」
「それよりも裸言うな」
未だに痛む頭を擦りながら言ったルークにガイとヒースのツッコミが入る。タリスはそれに小さく笑った。
「まぁ、皆で海に言った時とかねぇ」
それでなくとも夏は薄着だから大体わかるわ、と言うタリスにルークは「あ、そうか」と納得した。その様子は至って普通の世間話をしているだけなのだが、ヒースにとっては違っていた。
「………あのさ。皆してあまりにも普通にしてるけど。話の内容がかなりフツーじゃなさすぎるからな?」
況してや途中から会話に入ってきたヒースにとって、自分の話題の中で裸を見るだの見ないだの話されてもどうしようもない。それに漸く気付いたタリス達が「そう言えばそうだ」と声を揃えて言った瞬間には本気で殴りたくなったと言う。
「ヒース。見た所お前さんはかなり体を鍛えているように見えるが、本当に運動が出来ないんかな?」
ペールが唐突に話を変えるように(本当は最初に戻しただけだが)そう問うとヒースは一瞬答えるのを躊躇したが、やがて苦い顔をして頷いた。
「どうも昔から………駄目みたいです」
「でも生まれつきでもないわよねぇ」
少なくとも私と会ったばかり頃は木に登ったりもしていたし、とタリスが付け加えると、ルーク達は驚きを見せた。
「二人が会ったばかりの頃って、いつ頃なんだ?」
「幼稚園の頃だから……大体4歳ぐらいかしら」
「はぁ!? 4歳で木にまで登れて、何で今運動音痴なんだよ!」
ガイの質問に答えたタリスの言葉にルークは有り得ないとばかりに言う。ヒースはムッとして顔を背けた。
「そんなの知らないよ。いつの間にか出来なくなったんだから」
「そうは全然見えないんだがね〜」
「うむ……」
苦笑するガイにペールも頷く。相変わらずルークは「そうかぁ?」などと言ってはいるが。
「なら、実際に見てみたら良いわ」
タリスが思い付いたように言うと、4人の視線が彼女に集中した。
「見るって、何を見るんだ?」
「ヒースの運動音痴っぷりを」
「おぉ、そりゃ「待て」
良いぜ、と続く筈だった言葉を遮ってツッコミを入れるヒース。
「何っで態々自らの醜態を見せなきゃならんのだ」
「あら、ルーク達は全く貴方が運動出来ない事を信じていないみたいなのよ。だったら実際に見てもらった方が早いじゃない」
「いや、だからさ。信じてないならないでそれで良いじゃないか。大体、そんな物を見たって何の得がある」
「勿論あるわよ」
ふふふ、と笑うタリスに嫌な予感がしつつも先を促せば、やはりその通りな答えが返ってきた。
「今後の笑いネタになるわv」
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