A requiem to give to you
- 月が微笑み、焔は夢見る(6/8) -



「そんな事言われてもなぁ。俺が女性に触れないの知ってるだろ」

「まぁ、女性に触れないのですか?」



ガイの言葉を聞いたタリスが二人の会話に入ってきた。そして間髪入れずに彼女の問いに答えたのはルークだった。



「そうなんだよ。こいつ、女嫌いなんだってさ」

「誤解だ! 女性は大好きだぞ!!」

「ガイ、そこは力一杯に言うところではありませんよ」



フィーナのささやかな突っ込みが入り、ガイはうっ、となって再び頭を掻いた。その直ぐ横ではルークが笑いを堪えている。その様子をただジッと見ていたヒースはふと、タリスに耳打ちした。



「何か、僕達はいろんな意味ですごい所に来てしまったんだね」



それにタリスはうーん、と微妙な顔をしつつも頷いた。



「そう言えば」



ルーク達に弄られていた(?)ガイが唐突にそう切り出し、ヒース達を向いた。



「君達は誰だい? ルークと随分仲が良いみたいだが……」



何か色々と思う所があるのだろう。そう言って途中で言葉を止めたガイは彼らをどこか警戒しているようにも思えた。それは当の二人も何と無くだが気付いてはいる。しかし、そんな状態の彼に今自分達の話をしても信じてもらえるかどうかはわからず、結局何も言えずにいた。



「こいつらは平気だぞ」



意外にも助け船を出したのはルークだった。



「こいつら、ヒースとタリスって言うんだけどな。こことは別の世界から来たんだってさ」

「は???」



いきなり(ガイ達にとって)突拍子もない事を言い出したルークに彼の目は点になった。



「本当だぞ! この目でこいつが落ちてくるのを見たんだからな」



ルークはタリスを指して言う。その様子はまるで不思議体験をした子供が全く信じようとしない親に訴えるようで、どこか微笑ましかった。

しかしガイは何とも言えないような表情でルークに言った。



「それが本当だとしても、この子らはこれからどうするんだ? それに旦那様達への言い訳だって……」

「あ、それなら「その事で、一つ頼みがあるんですけど」



ルークの言葉を遮り、ヒースは軽く右手を挙げて言った。



「話の通り、僕達は他の世界から来てしまったみたいなんです。だから当然この世界の地理や常識を知らなければ、字の読み書きすら出来ません」



それはルークの日記を見てよくわかった。元の世界へと帰る方法がわからない以上、どの道この先字の読み書きくらい出来なければやっていけないだろう。

だから……



「少しの間………最低限この世界の事がわかるまでの間で良いので、ここに置いてもらえませんか?」



ヒースは三人に向かって深く頭を下げて頼み込んだ。突然の彼の行動にルーク達は驚いたが、それに構わず今度はタリスが神妙な様子で口を開く。



「実は私、元々ヒースとは別の場所で別の人と一緒にいたんです。……でも、ここに来る時にはぐれてしまって。多分、ヒースもあの子と一緒にいた………のかしら?」



確認の為に問うと、ヒースは軽く頷いて返した。



「あぁ。……でもやっぱりここに来た時には既に僕だけだった」

「───て、事はお前達みたいなのがあと二人いるって事なのか?」

「そう言う事になるわねぇ」



だからこそ、とヒースは話を戻した。



「その二人を探す為にも、この世界の常識を身に付けたいんだ」

「ルークは貴族だと言ったわよね? なら、使用人として雇って貰えないかしら」



その言葉にガイは酷く驚いた。


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