A requiem to give to you- 生きたい気持ち(6/6) -
「そう言えば聖ちゃん。どうしたろ……」
一緒に門を通ったからには、彼もこの世界に来ているだろう。
「無事だと良いんだけどな」
「オイ、何一人でぶつぶつ言ってンだ?」
もう戻ってきたらしく陸也にそう言われて振り返ると、そこにはグランツを始め皆がいた。
「話は聞いた。ダアトへ来てくれるのだな」
「……まぁ、取り敢えず落ち着くまでは」
それにグランツは頷き、「そう言えば」と思い出したように言った。
「まだ私の名を言っていなかったな。……私は神託の盾騎士団首席総長ヴァン・グランツ謡将だ」
「神託の盾?」
「この世界の宗教と併合している騎士団だ。そこのディストと言う男も神託の盾だ」
「ヴァン! どうせ私を紹介するならもっと美しい表現でなさい!」
グランツ……基ヴァンの説明に不満そうなディストがそう言ったが、残念ながら全員にスルーされた。
「それで、お前達の名は?」
そう問われ、宙は一番に口を開いた………が、
「あたしは日たn「オレはグレイでこいつがレジウィーダ。ンでもってそこにいるのがフィリアムな!」ってコラッ!!」
陸也改めグレイに割り込みされ、尚且つ勝手に偽名を言われた宙……レジウィーダは憤慨するが、当の彼はどこ吹く風だった。
「"無染の灰狼"に"光の芽"、そして"遠い記憶"か。存在だけでなく名前までもが面白いな」
「何だそりゃ?」
「て言うか、あたしら馬鹿にされてる?」
ヴァンの呟きにそれぞれの反応を示す二人に苦笑した。
「馬鹿になどしていない。とても珍しい意味を持った名前だと思ってな。それと、先程のはお前達の名を古代イスパニア語で訳したものだ」
その説明にグレイはふーん、とあまり興味が無さそうに返した。
「お……と、あとはそこの緑か。そいつの名前はどうすっかな」
「てか、何でアンタが決めてんねん」
ピシャリとレジウィーダの突っ込みが入った。
「あぁ? 悪いのかよ」
「悪くはないけど勝手に決めるな」
「悪くないなら良いじゃねーか。変な名前にするわけじゃねーンだし」
「まぁ、待ちなさい」
何故かいきなり喧嘩腰になり始めた二人にヴァンが仲介に入った。
「その子の名は既に決めてある」
え……、と二人はいがみ合いを止めて彼を見た。ヴァンは少年の頭に手を置いて言った。
「そう、お前の名は……シンクだ。意味は……」
"悠久を流れる風"
「……シンク、か」
「綺麗な響きの名前だね」
それぞれの感想と共に二人はシンクを見た。色々あって疲れたのか、シンクは目を閉じて眠りについていた。
「シンク。君の名前だよ。今日から君はシンクなんだ」
良かったね、と言ってレジウィーダは微笑みを浮かべてシンクの頬を撫でた。ヴァンはシンクの頭から手を離し、文字の刻んである岩の方へと歩いて行く。
「さて、いつまでもここにいるのは良くない。そろそろダアトへ向かうとしよう」
「わかった」
レジウィーダは頷き、再びシンクを背負って歩き出した。
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