A requiem to give to you
- 生きたい気持ち(4/6) -



「なぁ、一つ良いか?」



宙の話が終わると陸也は直ぐ様そう言った。



「さっきお前、そのガキと同じ姿をした奴がいたって言ったよな?」

「言ったけど、それがどうしたの?」



恐らく宙は少し沢山いる兄弟だと思っているのだろう。しかし、どうも陸也にはそれとは違う気がした。



「まさかだとは思うが……」



そう言ってディストを見ると、彼は眼鏡を押し上げながら頷いた。



「えぇ、その少年もレプリカです」

「レプリカ……?」

「要するに、オレ達の世界で言う"クローン"に近いモノだ。あそこの椅子に乗ってる子供もそうだぞ」



陸也の補足に宙は初めてフィリアムをちゃんと見た。



「君………ううん、それはともかく」



何か思う所があったみたいだが、一先ずそれを振り払ってグランツを再度向いた。



「どうしてこの子達を火山に放り込むような事をしたんだ?」

「失敗作だからですよ」



彼の代わりに答えたのはディストだった。



「その子供は我が教団の最高指導者で在られる導師イオンのレプリカ。訳あって彼の代わりにその役割を担うレプリカは当然その能力も被験者に近くなければなりません」

「つまり、ここに棄てられた奴らはその能力が劣っていた……ってことか?」

「まぁ、その通りですね…………ってうぉいっ!?」



ディストが言い終わると同時に彼の横を宙の蹴りが飛び、椅子へ強い衝撃が走った。幸い、壊れる事はなかったが、椅子に掴まっていたフィリアムが危うく落ちそうになったのを陸也が咄嗟に支えていた。



「あああああ危ないじゃないですか!?」

「……勝手過ぎるだろうが」



宙はドスの利いた声で唸るように言った。



「勝手に造って、勝手に調べられて、いらなくなったら処分しましょう? ……ふざけんなっ!」

(ま、普通はそう思うよな…)



陸也はつい数刻前に自らが言った台詞を思い出した。



「じゃあ、生まれたこの子達はどうするんだよ! 生きたいと思っていたかも知れないのに、それを無視して虫けらのように殺しやがって! この子達にだって生きる権利がある筈だろ!!」

「オイ、お前ちと熱くなりすぎ…」

「じゃあ、アンタはこの子達が死んでも良いのかよ!?」

「別にンな事思っちゃねーけどよ。でも取り敢えず、」



少し落ち着け。

そう言いながらも陸也は何故これ程までに彼女が激怒しているのか、内心わかりかねていた。グランツはそんな宙の言葉に神妙な面持ちで言った。



「生きたいと思っていた……か。その通りだな」

「なら尚更……!」

「そもそも私は、それを確かめにここへ来たのだ」

「……………何だって?」



その言葉に宙は一瞬にして怒りを鎮め、変わりに目を丸くした。



「本当に生きたいと思うのなら、自力で立ち上がって来るだろう。それを確かめたかったのだが…………その前にお前が助けてしまったな」

「どうしてここで確かめるんだよ。その前にだって出来たんじゃないの?」



それにグランツは首を振った。



「いや、あの場には大詠師がいたからな。その子供らを廃棄する決定を下したのはあの方であり、仮にも私の上司だ。逆らう事はできん。それに……」



そこまで言って一旦間を置き、遠くを見た。



「人は窮地に立たされる程、生に対する欲を持つ。それをこの意思の薄いレプリカにどれ程備わっていたのか、私は見てみたかった」


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