A requiem to give to you
- 生きたい気持ち(3/6) -

そんな彼にムッとしながらも宙は口を開いた。



「えー……と、あたし達は実はとーっても遠い所から来ましたー。その際に通る"門"をには当然の事ながら鍵が掛かっているわけでしてー、それを開く為の"鍵"があるんですよー。………で、本来はその"鍵"はそこにいるアホ男が持っている筈なんですけどー、何故か現在紛失中らしく"門"を開ける事が出来ないんですがー、これまた何故か勝手に開いてしまってー、気が付いたら巻き込まれた方々がそれぞれあちらこちらに飛ばされてしまっていた訳なんですわー」



ご理解頂けましたかー?



「さ、さっぱりわかりません……」

「つーか、ムカつくぐらい見事な棒読みだな」



宙の完全棒読み説明をイマイチ理解出来ないでいるディストを他所に陸也はそれを淡々と指摘すると、宙は「ほっとけ」と小さく吐き捨てた。

一方、グランツは暫く黙って考えていたが、ふと二人に言った。



「つまり、お前達はこの星の人間ではない……と言う事か?」



それに陸也は感心したように彼を見た。



「へェ、あの説明だけでそこまで考え至るなんてな。あんた実はエスパー?」

「……いや、以前にも似たような事を言っていた者がいたのでな」

「「似たような事を言っていた?」」



陸也と宙は声を合わせて繰り返した。



「あぁ。………もう、亡くなったがな」



一瞬、その場の空気が何とも言えない気まずいモノとなったが、それを振り払うようにグランツは「それよりも」と続けた。



「お前達はこれからどうするつもりだ。帰る手段はあるのか?」



その問いに陸也は首を横に振った。



「今の所はないな。こっちに来た理由だってよくわかってねーンだ。知り合いだってまだ全員見つかってねーし、暫くはこっちに滞在だな」

「そうか。……ならば、ダアトへ来ないか?」



予想外の申し出に陸也達のみならず、ディストまで驚いた顔をした。



「唐突すぎだろ」

「何考えてやがンだ?」



端から見れば怪しい所だらけの二人。そんな彼らを誘うとは奴の気が知れない、と言う目で二人はグランツを見る。しかしグランツはさして気にせず、小さく笑った。



「なに、ただ面白いと思っただけだ」

「それだけとは到底思えないんだけど」

「どう思ってくれても構わん。だが、どの道このままでいるわけにもいかないだろう」



あくまで疑り深い宙にそう言って彼女の後ろを指差した。彼女に抱えられた(と言うより背負っている)少年はかなり衰弱していた。手足や顔の至る所に火傷や痣があった。確かに彼の言う通り、このままにしておけば命に関わる。



「そう言や思ったンだけどよ。お前、何でそのガキ背負ってそのオッサンと対峙してたンだ?」



陸也が思い出したように問う。それに宙は「わからない?」と言って手押し車の残骸や倒れている研究者を向いた。



「あの手押し車、元は結構大きかったんだと思う。沢山の"何か"があったんだろうね。この子があの人達を手伝って荷物を運んでいたにしては、この子の格好はあまりにもこの場所に適してなさ過ぎる」



フィリアムもそうだがこの少年は靴も履いてなければ、火傷に対する何かをしているわけでもない。服を着ていると言っても、それは本当に申し訳程度に一枚布を被っているようなものだった。



「実はあたしがここに来た時、この子と全く同じ姿をした子供がいたんだ。そして火口の中にいたこの子を助けてほしいと言って消えていった」



消える寸前にあの少年が助けを求めた時の顔はまだしっかりと思い出せる。



「これはあたしの憶測だけど、手押し車の大きさからしても多分、まだこの子と同じ姿をした子供がいたんだと思う」



でも、今はいない。最初に宙が見た少年のように自然に消えていったか、もしくは…………



「この子があんな所にいた事からしても、最初からあの人達はこの子達を溶岩に沈める気だったんだよ。そしてそれを命じたのが……」



宙はグランツをキッと睨み付けた。



「この人だ」


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