A requiem to give to you
- The white departure(9/11) -



「それで?」

「ん?」



一息吐いてグレイが問うと、レジウィーダは首を傾げる。その様子に今度は盛大な溜め息を吐きグレイは改めて問い掛けた。



「何で急に旅なんだよ」

「だから言ったじゃん。探し物と世界見解を広げる為だって」

「だからその探し物って何だって言ってんだよ」



涙子と聖の事か、と問うて来るグレイにレジウィーダはうーん、と一度考える仕草を取ると首を振った。



「違う。いや、完全に違くはないけど」

「はあ?」

「だから! 涙子達を捜すのも旅の課程ではあるけど、最終的な目的は別にあるの!」

「なんだよ、それは」



そう問われてう、となる。どう説明したら良いのかがわからないのだ。



「えーと、」



そして考え抜いた挙げ句、



「自分探し!」



と、言う結論に至った。だが、ある意味間違ってはいないと思う。しかし当然そんな他者が聞いたら意味不明な理由に彼が納得する筈もなく、



「却下」



一言で一蹴した。



「大体テメェ、只でさえ涙子達捜して四苦八苦してるってのに、テメェまで所在不明になられたらまた捜すのが面倒臭ェ事この上ねーンだよ」

「別に面倒臭くないよ。アンタがいるじゃん」

「何?」



どう言う意味だ、と言いたげな目で見てくるグレイにレジウィーダはニッと笑った。



「だってさ、仮にアンタが涙子と聖を見付けて後は帰るだけってなっても、アンタがここに居ればあたしがまたここに帰って来れるでしょ?」














『君がここに居てくれるから、わたしはまたここに還って来れるんだよ』












「…………!?」



今のは……と、一瞬頭の隅を掠ったモノに驚いていると不意にレジウィーダが口を開いた。




「だからさ、あたしは行くよ」



その言葉にハッとしてレジウィーダを見れば、既に船に向かって歩き出していた。



「オイ、待て…………























待ちやがれっつってンだろうが馬鹿日谷!!」



そんな怒鳴り声と共にダンッと言う音が響いた。それと同時にレジウィーダの頬を何かが掠める。



「!?」



それに一瞬怯んだ隙を突き、グレイは彼女の腕を自分の方に引いて無理矢理抑え込むと、その頭に何かを押し当てた。



「なにす……」

「テメェ、こんな攻撃一つまともに避けれねェで旅をするだァ? 舐めてンじゃねーぞ」



彼女の頭に押し付けた物は譜業銃だった。飾り気もなくボディもリグレットの持っている物よりも一回り程小さいが、その分スピードと威力はある。この至近距離からトリガーを引けば間違いなく一発であの世逝きだろう。



「外はテメェが思ってるほど甘くはねェ。場合によっちゃあ魔物だけでなく、人間をも手を掛けざるを得なくなるかも知れねーンだよ」

「……………」

「ワリィがオレにはテメェが人を殺められるとは思わない。大人しく諦めて教会に帰れ」



外は自分達のいた世界よりも遥かに危険が一杯だ。何も知らないで行けば直ぐに死へと繋がる。生き残る為には殺られる前に殺るしかない。その重みにこの少女が耐えられる筈がない。今まで書類漬けで教会に縛り付けていたのだって、負わなくて良い罪を彼女に背負わせない為だ。こんなのは、彼女のような者が手を汚すようなモノじゃない。

そう、思っていた筈なのに……



「坂月君」



何故この少女は……



「アンタは……
















優しいんだね」



こんなにも冷たい声をしているんだ?


.
/
<< Back
- ナノ -