A requiem to give to you
- The white departure(8/11) -



「そのくらいにしなさい。こんなところでは悪目立ちする」

「ここじゃなければ良いのか……」



今度こそフィリアムが突っ込んでいたが、レジウィーダは珍しく素直に聞き入れるとパッとシンクから離れた。



「ま、良いんだけどね」

(た、助かった……)



口元を腕でガードしていたシンクは内心ホッとしていた。



「ところでレジウィーダ。お前は何故こんな所にいる? それにその格好は……」



リグレットがそう問うと、レジウィーダは思い出したかのように手を叩いた。



「あ、そうそう! 皆に言いたい事があったんだよ」

「言いたい事?」



アリエッタの言葉に頷く。



「うん。あのね、あたし………旅に出るから!」

『………………は?』



突然の宣言に一同呆然とする。予想通りの反応に苦笑すると、レジウィーダは「それじゃっ」と言って走り去っていった。



「姉貴………」



ただ一人、フィリアムの呟きだけがその場に響き渡った。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







言うだけ言って出てきたダアトを背に走り、ダアト港へと来たレジウィーダはシルバーナ大陸へ向かう船の時間を確認していた。



「うーん、まずはやっぱりケテルブルクからだよなー」



何が出来るかを考えた結果、やはり全ての鍵を握るのは例の雪国だろう。記憶には残っていないが、きっと今このダアト港よりも広大な銀世界が広がってると考えると、目的とは別の胸の高鳴りを感じた。



「それでえー……と、出航時間は……───」

「ストロォォォォオングッ!!」






ドカッ






ズシャー






「フッ、決まったぜ……」



スタッと跳び蹴りからの華麗な着地を決めたグレイは酔ったような口振りで気障ったらしく髪を払った。一方、蹴られた事により雪の上を顔面から滑る事となったレジウィーダは痛む顔を擦りながら立ち上がると、振り向き様にローリングソバットを繰り出した。



「何すんじゃワレェエエエエッ!!」

「おっと、…………何すンだ、だとォ?」



一歩下がる事でギリギリレジウィーダの攻撃を避けたグレイは彼女の言葉にピクリと反応した。



「それは、こっちの台詞だこのすっとこどっこい!!」

「いだだだっ、髪引っ張るなーー!!」



グイグイと容赦なく触覚のようになっているレジウィーダの髪を引っ張るグレイの脚を蹴りながら抗議をする。しかしグレイは力を弱める事なく言った。



「テメェ、どう言うつもりだ」

「どうって?」



ブチッ



「どうってじゃねェー!! 旅って何だ旅って! いきなり意味わかんねーンだよ!!」



キョトンとして返したレジウィーダに何かがキレたグレイが怒鳴る。それにより髪を引っ張る力が増し、レジウィーダは涙目になりながら暴れた。



「痛い痛い痛い! ホント、マジ痛いってば! 暴力反対ィイイイイッ!!」

「普段暴力魔神な奴が何言ってやがる!」

「〜〜〜〜〜っ、だからァ……」



ガシッとレジウィーダはグレイの腕を徐に掴むと音素を集めた。



「離せやバカッ! エナジーブラスト!!」

「おわっ!?」



こればかりは流石に危険を感じ、爆発が起こる直前でグレイは慌てて手を離した。



「おま、危ねーだろうが! 腕吹っ飛ばす気か!?」

「あたしだって禿げるかと思ったわ!!」



ゼェハァと互いに白い息を吐きながら互いにそれぞれの箇所を押さえる。取り敢えず異常はないようだ。


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