A requiem to give to you
- The white departure(6/11) -



「結ばれた……"約束"……」

「無理に思い出そうとしなくても良いですよ。それにどの道、私達が言葉にして伝えただけでは貴女に無駄な苦痛を与えるだけですから」



そう言って頭に置かれたクリフの手はとても優しい暖かさを持っていた。



「ただ、今私から言える事は一つ。……君達は今回、"四人で"この世界に来ている。それだけは忘れないで欲しい」

「……………」

「君には君の、思ったやり方で君の想う未来への目的を果たしてよ。だって………」



それでこそ君なんだから。

一頻り頭を撫で回した後、ゆっくりと手を離してクリフは部屋の外へと出て行った。



「あたしの想う未来………?」



静まり返った部屋に一人残されたレジウィーダはポツリと呟くと、ふと目に入った自鳴琴を手に取った。



「約束…………」



一体誰と何の約束なのかは全くわからない。だけど、それがとても大切なモノだと言うのはわかった。なら、自分が今出来ることは……───



「……………」



一度目を閉じ、ゆっくりともう一度開く。そこにはいつしかと同じ、決意に満ちた表情があった。













「…………行かなきゃ!」



その言葉と共に勢い良くベッドを飛び出した。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







「これで今回の報告は以上だ」

「はい、ご苦労様でした。とても大変でしたね」



口答での報告と、たった今グレイより手渡された報告書を手にしたイオンは苦笑気味に労りの言葉を掛けた。



「大変なんてモンじゃねーよ。あの馬鹿野郎共、人に報告書まで押し付けやがって。こちとらまだ怪我だって治ってねーンだぞ」



まぁ、お前に言っても仕方ないけどよ。と、付け加えるグレイにイオンは困ったように笑うしか出来なかった。そこへ……







バンッ








「「?」」



勢い良く開かれた扉に二人は何事かと振り向けば、そこには教団のでも騎士団のでもない、どこか旅人の様な格好をしたレジウィーダがいた。それにグレイは違和感を覚えるも、取り敢えず声を掛けた。



「もう目ェ覚めたのかよ」

「まあね………ってか、あたしはロリじゃねーぞゴラ」



ジト目で睨むと「まぁ、歳はなー」と軽く返された。それにイラッと来たものの一先ず流す事にし、レジウィーダはイオンに直った。



「導師イオン」

「? どうしました、急にそんな改まって……」



あの礼儀や社交性皆無なレジウィーダの態度に驚きつつイオンは問うと、レジウィーダはスッと一枚の紙を差し出した。



「これは………」



イオンの目が目一杯に開かれる。そんな彼に気にする事なくレジウィーダは一歩下がると敬礼した。



「私、レジウィーダ・コルフェートは……


















本日付けで神託の盾辞めます!」

「……………は?」

「レジウィーダ……」



そう、レジウィーダが今イオンに渡したのは辞職届だった。突然の彼女の宣言にイオンは哀しげに眉を下げ、グレイはレジウィーダの言った意味を理解するのに必死な様子だった。



「あの、レジウィーダ」

「何でしょうか?」

「理由を、お聞かせ願えませんでしょうか……」

「探し物と世界の見解を広げる旅をしてきます!」



挙手と共に元気よく宣言されてしまい、イオンは何も言えなくなってしまった。一方、レジウィーダは満足げに一つ息を吐くと二人に言った。



「それじゃ、二人共。元気でね。どこかで会えたらよろしく!!」



言うが早く、あっと言う間に部屋を飛び出ていったレジウィーダを、二人は呆然と見送る事しか出来な…──



「………って、



















ンな訳あるかああああああああああああっ!!」



グレイは我に返ると、これでもかと言う程絶叫した。


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