A requiem to give to you
- The white departure(5/11) -


そんなディストの様子を軽くスルーすると、クリフはレジウィーダを向いた。その表情はどこか怒っているようにも見えた。



「それより、君は人の話を最後まで聞かなすぎ。お陰で探しに行ったりして二度手間だよ」

「だって、あんなSM本チラつかされたらイヤな予感ぐらいするよ」

「あれはただの趣味だって言ってるでしょ。それとも何、ホントに逃げられないようにそのベッドに縛り付けてあげようか?」

「全力で遠慮します」



首がもげそうになる程全力で首を横に振ると、「そう……」と微妙に残念そうな声が返ってきた。



「ちょ、私を無視しないで下さい! て言うか、大体なんつー話をしてるんですか貴方達は」



スルーされていたディストが講義をしつつそう言うと、クリフはパッと笑顔になり……



「あ、まだいたんですか。つーか、さっきから色んな奴に話を邪魔されまくっていい加減ウザくなってきてるんですよー。


















消し炭にされたくなければ今すぐ去ねや」









………………











「失礼しました」











バタン









「………なんて事を」



ディスっちゃん可哀想に……と、真っ青な顔で強制退場させられたディストに同情するレジウィーダを余所に、クリフは全く悪びれずに良い笑顔で振り向いた。



「さて、レジウィーダ。早速話なのですが」

「な、何でっしゃろか?」

「トゥナロのウンチクショーが君にすっかり伝え忘れていた事がありましてねぇ」

「伝え忘れていた事?」



ええ、とクリフは頷くと途端に表情を引き締め、レジウィーダも自然に背筋が伸びた。



「貴女達がこの世界に喚ばれた理由です」

「理由……」



その言葉に、レジウィーダはふと昨年の自分の言った言葉を思い出した。



『壊すんじゃなくて、覆すのはどう?』



結局、アレから特に何かがわかった訳でも、事態が進展した訳でもない。どうやって預言を覆すのかだって、全然わからないでいる。



「それってやっぱりさ、預言だよね」



クリフは大きく頷いた。



「はい。貴女達はローレライによってこの世界に浸透し、刻まれた預言を覆してもらう為に喚ばれました。貴女も知っての通り、この世界の人々は預言とそれを詠んだ始祖ユリアを崇拝してはいますが、それ故成就の為ならば他者の命をも平然と犠牲にしてしまうところがあります」



あまりな言い方だったが、確かにそれは言いようのない事実だった。勿論、全ての人がそうと言う訳でもないが。



「これはまだトゥナロや私以外にも本当に極一部の者しか知らない事ですが、その預言の行き着く先には人一人どころか、世界全体を破滅させかねない事実が詠まれています」

「!?」



だからこそ、それを決して預言が詠まれない者……異世界の者達に覆して欲しい。そうして貴女達四人が喚ばれたのだそうですよ。そう言ったクリフにレジウィーダは言葉が出なかった。大体の予想は当たっていたとは言え、まさかそのような大きな事実が絡んでいるとは思っていなかったからだ。



「……と、まぁこれはあくまで君達四人の喚ばれた理由なんだけどねぇ」



突然いつもの調子に戻ったクリフを不思議に思い、そちらを見れば案の定肩を竦めていた。



「"今回"、君の場合はそれに加えて、もう一つ大事な事があるみたいです」

「どゆこと……?」

「つまりは……そうですね。これは私もよく知らないのですが、トゥナロ曰く「お前は結ばれた"約束"を果たせ」だそうです」



結ばれた"約束"……?








ズキン









「…………っ」

「どうやら、私から話せるのはここまでのようですね」



頭を押さえ、頭痛に耐えるレジウィーダを見てクリフは溜め息を吐いた。


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