A requiem to give to you
- The white departure(4/11) -



「その時にですね。ネフリーが突然昔埋めたタイムカプセルを開けようと言い出しまして……。私としてはジェイドも一緒にいる時に開けたかったのですが、前にも言ったように縁を切られてましてね。それにジェイド自身も連絡は寄越す物の、全く帰ってくる気配がないとの事で、今回二人で開ける事になったんです」



そうなんだと相槌を打ちつつ、この間から度々話に出てくるジェイドと言う人物が誰かを考えた。



「貴女は覚えていないようですが、貴女も一緒にタイムカプセルを埋めたんですよ」



それにレジウィーダは意外そうに目を開いた。



「何を埋めてたの?」

「レプリカ情報です」

「………なんだと?」



間髪入れずに返ってきた内容に思わず聞き返す。するともう一度ディストは同じ答えを言った。



「レプリカ、情報って……あたしは一体何を埋めてんだ……」

「プラス、私達4人への手紙も入ってましたよ」

「手紙……それ、今ある?」



どことなくショックに打ち拉がれながら問うと、ディストは首を横に振った。



「いえ、読む前にネフリーに全て取り上げられてしまいました」

「って事はその手紙は今ケテルブルクにあるって事か」



何故に四人宛ての手紙を宛てた本人にすら見せないのだろうかとも思ったが、そこを言及すればまた話が脱線しそうだと思い直すと、一先ず手紙の事は頭の隅に追いやった。



「てかディスっちゃん。そのタイムカプセルにあたしのレプリカ情報があったから、今になってフィリアムを造ったんだね」

「まぁ、そう言う事です……が、ただ一つ不可解な点がありましてね」



そう言うとディストは途端に難しい顔になり、レジウィーダは首を傾げた。



「まだ貴女がいた時、貴女のレプリカを造ってみようと何度か情報を抜こうと試みた事があるんです」

「それで……?」

「ですがどうやっても引き抜く事が叶いませんでした」



だから何故タイムカプセルに貴女の情報が入っていたのかがわからないのですよ、と唸るように言うディスト。レジウィーダは考えた末にある事に思い至り、問い掛けてみた。



「レプリカ情報って、どう言う物質で出来てるんだ?」

「無論、音素ですよ。この世界のあらゆる物質は音素で出来ています。ですから当然、レプリカ情報も音素で出来ています」

「まぁ、そうだよねー。なら無理に決まってるよ」



うんうん、と納得するレジウィーダにディストは不満そうに顔を顰めた。



「何故ですか?」

「だってあたしは音素とは全く無縁の世界にいたんだ。当然、この身体を構成するのも音素じゃないって事」



だから物質を構成する音素から情報を抜く技術では無理な話なのだ。



「では何故、タイムカプセルに情報が入っていたんですか」

「それはわからない。けど、もしかしたら……」



現地に行ってみれば何かわかるかも知れない。その言葉は突然開かれた扉の音により呑み込まれた。



「レジウィーダ、帰ってきてるね」

「クリフ」



静かに部屋に入ってきたのはクリフだった。瞬間、先刻の事を思い出し身構えたが「別に何もしないよ」と肩を竦められ、渋々力を抜いた。そんな二人の様子を訝しげに思いつつ、ディストはクリフを見た。



「貴方は誰ですか?」

「人の名を訪ねるならば、まずは自分から名乗るべきではありませんか。死神さん?」



嫌みったらしく口元を上げて返したクリフにディストは途端に憤慨して「薔薇だ!」と訂正した。


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