A requiem to give to you
- たゆたう心(5/7) -



「これから私とレジウィーダは大事なお話があるので、お二人には退室願いたいのですが……」

「何さ、ボク達がいたら何かマズイ話でもするって訳?」



面倒臭いと言いたげにシンクがそう問うと、クリフは途端にニヤリと口元を上げた。



「私は別に構いませんけど……………………………後悔しますよ?」



そう言いながらスッとローブの下から出した本のタイトルを見たシンクは仮面の下で大きく目を見開いた。



「これって……」

「私の趣味ですv 混ざります?」



コトン、と可愛らしく(?)首を傾げながらの問いにシンクは全力で首を横に振り、よくわかってないアリエッタの襟を掴むと早々に部屋を出て行ってしまった。



「ま、それは冗談だとして本題に………って、レジウィーダ?」



二人が居なくなったのを確認して本をしまい振り返れば、椅子に座っていた筈のレジウィーダの姿はどこにもなくなっていた。

そしてそのレジウィーダはと言うと……

















クリフがシンク達に気を取られている隙に窓から部屋を抜け出し、現在進行形で中庭を猛ダッシュしていた。



「怖いあの子マジ怖い! 可愛いけど怖いってあれは!」



一体二人になった瞬間何をするつもりだったのだろうか。いや、知りたくもないのだが……。クリフがシンクに見せていた本のタイトルが見間違えでなければ、この間見たのと同じSM関係の本ではなかろうか。どう見てもあれはMには見えない。とすれば、受ける対象者は間違いなく……………



「いやいやいや、ない! 絶対ない! 実験なんて有り得なあああああああい!!」



ブンブンともげるのではないかと言うくらいに首を横に振って考えを否定しながら叫ぶ。その時その声に驚いた人が近くで爆発を起こしたような気がしたが、レジウィーダは構わずその場を走り去っていった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







「……ゼェ、ハア………さ、すがに………疲れた」



目的もなく走り続け、漸く立ち止まったレジウィーダは肩で息をしながらそう呟いた。



「てか、ここって……」



落ち着き、辺りを見渡せばそこは教会の裏の小さな庭だった。そして目の前には今は亡き深緑の導師の小さな墓石が立っていた。レジウィーダはそれに歩み寄ると、優しく墓石を撫でながら苦笑を漏らした。



「そう言えば……イオンもあんな感じだったな」



彼と初めて会った日、素直になれない自分に向かい散々な事をしてくれたあの悪ガキ導師の事を思い出す。その時の彼の笑みとあのSM好き少年の顔が重なり、レジウィーダは「はて、」と首を傾げた。シンクと口論をしていた時もそうだが、クリフにはどこかかの少年の面影があったのだ。



「クリフって、もしかしてイオンの……?」



そこまで思い立ったが、直ぐに「それは流石にないか」と考えを否定した。何せ、彼のレプリカはシンクと今の導師であるイオンを残して皆消えてしまったのだから。そもそもクリフの素顔はあの白いフードで隠れていてわからないのだし、ただ雰囲気が似ているだけなのかも知れない。

そう自己完結をすると、レジウィーダはイオンにまたあの自鳴琴を聴かせようとポケットに手を入れた……………が、



「あ………、れ?」



ポケットにはぽっかりと見事な穴が開いており、中には当然何も入ってはいなかった。



「嘘だろ……!?」



レジウィーダは慌てて辺りを見渡す。



(途中で落とした!?)



サーッと血の気が引いていくのがわかった。早く探さなきゃ、と慌ててその場を駆け出そうとした時、誰かに腕をがっしりと掴まれた。



「!!?」



驚きに振り返ればそこには……



「あ〜な〜た〜と〜い〜う〜ひ〜と〜はぁ〜〜〜〜〜!!」



全身丸焦げになったディストがこちらを睨みつけていた。


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