A requiem to give to you
- 追憶と夢想(5/5) -



「あ゙ーよく寝たなー。今何時だ?」

「一時半だね」

「そうか………じゃあ何か食うか」

「いやアンタさっきまで散々お菓子貪ってたよね?」

「あ? さっきのは朝飯だ。それに寝たら腹も減るだろ」

「朝は朝で早くから食堂でラーメンに七味二本半もぶっかけて食べてたじゃん。いい加減にしないと腹壊すよ」

「……ったく煩ェな。お前は母ちゃんか」

「さっきは小姑で今度は母親?」



勘弁してよ、とクリフは嫌そうに手を振る。



「どうせなら調教師が良いね」

「悪いがそんな趣味はない」



当然ながら青年はきっぱりと断った。



「そう、それは残念だ。折角SM縛りを覚えたのに………」



本当に残念そうにどこからか出した荒縄を手に持つクリフに青年の顔が引き吊った。
そのまま何も言わずに二人を凝視している(と言うか固まっている)レジウィーダを振り向くと助けを求めるように肩を組んだ。



「おーい、お前からも何か言ってやってくれよ。このガキ、年食う度に危ない道を渡っていくんだがどうしたら良いよ?」

「…………! ちょ、離せっ」



少し遅れて反応したレジウィーダは青年の腕を勢い良く払い除けた。それに青年は不思議そうに瞬いたが、直ぐに理解したかのように手を叩いた。



「ああ、そうか。そう言やお前はスキンシップするのは好きだが、されるのは苦手だったな」

「ヘェ、そうなんだ。意外ー」

「いや、て言うかアンタら………」



誰……、と漸くまともな言葉が出てきたレジウィーダは二人……と言うより青年の方をジッと見ていた。それに気が付いた青年はフッと笑うと口を開いた。



「オレか? オレ様はトゥナロ・カーディナルだ。……ンでもって今は第七音素意識集合体ことローレライの使者やってまーす♪」

「………はい、?」



ローレライ、とはあのローレライ……?

何ともふざけた自己紹介と共に出てきた単語にレジウィーダは訝しげにトゥナロと名乗る青年を見ると、彼はとんでもない事を口にした。



「お、そうだ。ついでに言っておくが、オメェらをこの世界に呼んだのはこのオレ様だ」

「え………」

「と言う事で、以後よろしく頼むぜ。

















宙」



久し振りに聞いた本名。瞬間に己の心臓が有り得ないほど跳ねたのは口にした彼の声のせいなのか、それとも本名を言い当てられたからなのだろうか。そのどちらなのかは定かではない。しかし彼のその声は先程までのぼやける頭の中を掠める人が呼ぶ物とはかなり違う物だったが、そこにある暖かさは確かに同じだった……。













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