A requiem to give to you- 追憶と夢想(3/5) -
「ん、………?」
身動ぎをしながらフィリアムが目を覚ました。しかしそれにも気付かずに難しい顔で考え事をするレジウィーダを見るとどこかボーッとする思考のままに声をかけていた。
「……姉さ、ん………?」
「………へ?」
その声に驚き顔を上げたレジウィーダは目を瞬かせながらフィリアムと見つめ合う。そして自分が何を言ったのかを漸く気付いたフィリアムは後ろに吹っ飛んだ。
……が、しかしベンチに阻まれ盛大に頭を打っただけだった。
「〜〜〜〜〜〜っ!?」
「だ、大丈夫……?」
涙目で頭を抱え悶える姿にレジウィーダは頬を掻きながらも心配で訊いてみる。フィリアムは直ぐ様身体を起こしてベンチに座り直すと小さく頷いた。
「だ、大丈夫……だ!」
(……ええ子や! この子めっちゃええ子なんやけど……も、)
「取り敢えずその目についた雫を拭こうか、ね」
そう言ってハンカチを渡すが、フィリアムは受け取らず自らの服の裾でゴシゴシと乱暴に目を拭いたのだった。
「これで大丈夫だ!!」
「あ、うん……そうだね」
まだ微妙に鼻が赤いと思ったが口には出さず、子供らしい強がりに苦笑が漏れた。そしてその様子をどこか懐かしく感じていた。
「………………」
「姉貴……?」
「! え、何??」
再び思考に呑まれていたレジウィーダにフィリアムが心配そうに声をかけると肩を震わせて我に返った。そして気付いた。
「てか……姉貴って………」
「あ………」
しまった、とでも言うような顔で視線を逸らしたフィリアムが気になり顔を覗き込むと、どことなく顔が赤い気がした。
「フィリアムくーん?」
「これは……その、…………ア、アンタが俺を………弟だって、言うから………別にそう呼んでも良いかなって……」
そう言った彼はそれっきり俯いてしまった。だがレジウィーダはそんなフィリアムをただ見つめることしか出来なかった。いつもの彼女だったなら嬉しそうに「可愛いv」とか言って抱き着くなりからかうなりをしていた筈だったのに……だ。
「これって……」
一体この感覚は何なのだろうか。懐かしさと愛しさと、そして寂しさとが混ざり合ったような……決して穏やかとは言えないモヤモヤとした感覚。それが何だかとても気持ちが悪くて、レジウィーダは胸の辺りを押さえた。
「……あの、何かあったのか?」
様子のおかしいレジウィーダにフィリアムは再び心配の色を覗かせる。
「いや、何もないはずなんだけど」
「でも顔色悪い……。帰って休んだ方が………」
そう言って立ち上がったフィリアムがレジウィーダの肩に触れた瞬間、二人の間に衝撃が走った。
「「!!?」」
『どうしてあの人だけが居なくなってしまったの……貴女は何をしていたのよ!!』
『僕は……いつも君達に何もしてあげられないのが歯痒くて堪らないんだよ』
『ほら、さっさと手ェ出せ。今回だけは特別に引っ張っていってやるよ』
『死ぬって、どんな気持ちなのか……あんたにはわかるのか?』
『これからもお兄ちゃんと友達でいてあげてね!』
『なーに言ってんだ。あいつは俺の嫁だぜ!』
『こ、これで精一杯だよ〜。君は本当にすごいや……』
『笑顔ってさ、本当に幸せだって思う時に自然に出てくるものだろ? だから思うんだ。笑顔は……幸せの象徴だって』
だからお前はずっと幸せでいてくれよな
………宙
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