A requiem to give to you
- 交わらない旋律(4/4) -


バチカルから少し離れた場所で、グレイは困ったように一人立っていた。



「面白そうだからと後つけてきたは良いが………とんだモノを見つけちまったなァ」



ファブレ邸の前で待っていた時、退屈だと城下を見下げていて偶然にも見付けてしまった一人の少年。何故にこんな所を顔も隠さずにフラついているのかと気になり暫く見ていたのだが、少年が人影の少ない所に近付いた瞬間に数人の男達に大きな袋を持って少年を囲んだ。そのまま少年は抵抗も儘ならず、まるで荷物のように袋に詰められ連れて行かれる姿を目撃してしまったのだ。恐らく最近噂の事件が絡んでいると踏んだグレイは少年を助ける気など更々なかったが、興味半分で男達の後を追い掛けていった。

そして辿り着いたのがこの砦だったのだが……



「ここってアレだよな。如何にもラスボスいますよ的な敵地だよな……てーことは、オレって今勇者ポジションか?」



困ったなーオレ別に勇者じゃないから関わらなくても良い?、と頭を掻きながら見上げた建築物を前にどうしようかと考えていると、ふと背後に気配を感じた。



「てめぇ、こんな所で何してやがる?」

「ん? その声は……」



聞き覚えのある声に振り向けば、そこには紅い髪の勇者とその下僕達がいた。



「誰が勇者とその下僕だ!」

「あ? 聞こえた??」

「思いっきり声に出してたじゃねぇか!!」



と、盛大にアッシュからの突っ込みをもらってしまった。しかしそんな事では挫ける筈もないのがグレイ・グラネスだった。



「あ、ワリィな。この建物見てたらつい昔のRPGがやりたくなっちまってよー。ド○クエとかドラ○エとか○ラクエとか」



ケラケラと笑うその様が気に入らなかったのか、アッシュはギッとグレイを睨み付けた。



「そんな事はどうでも良い! それよりてめぇ何でこんな所にいやがる」

「ん? 何かよー、やたらと見覚えのある奴がここに連れてかれンのを見たから、ちょっとからかってやろうかと……」



そう言うとアッシュは途端に呆れたように溜め息を吐いて頭を抱えた。



「馬鹿かてめぇは。そりゃ作戦の内だ」

「作戦?」

「囮を使って奴らのアジトを見付ける為のに決まってるだろ。大体、あの野郎が普通に易々と捕まるわけがねぇだろうが!」



それもそうである。あの少年……シンクがそんなにあっさりと捕まる訳がなかった。それ以前に捕まったら捕まったでアッシュ率いる特務師団だけで動くと言うのはない筈だ。

そう思うとグレイは途端に残念な気持ちになった。



「ンっだよ、つまンねーな。折角良い暇潰しが出来ると思ったのによ」

「何アホな事言ってやがる……………が、まぁ良い」



言うと同時にアッシュはグレイの肩をガッシリと掴んだ。



「………えーと、アッシュ君? この手は何かな??」



何となく嫌な予感がしてアッシュを見れば、彼は悪どい笑みを浮かべた。



「どうせ暇してやがるんだろ? だったら潜入捜査に付き合え」

「えー……面倒臭い」



しかし訴えの言葉も聞く耳持たず。アッシュは部下達にいくつかの指示を出し、項垂れるグレイを引き摺って砦の中へと入っていった。













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