A requiem to give to you- れっつ★ぱーてぃ?2(6/6) -
「ナタっちゃん?」
「その、羊羹は……多分………いえ、確実に………わたくしが前に作った物ですわ」
「「「え?」」」
どう言う事だとレジウィーダ達がナタリアを見ると、ナタリアはとても言い辛そうにしながらも説明した。
「前にタリスから羊羹の話を聞いてルーク達に振る舞った事があるのですが、その時に食べた者達が昏倒する事態に陥りまして……」
「oh………」
「それからも何とか成功させようと二年近く練習をしていたのです。旅を始める直前に作った物が今回のそれで、帰ってきたらルーク達に食べてもらおうと凍らせて保存をしていましたわ。それで、今回全員とは行かずとも人数が集まったのでわたくしの練習の成果を味わってもらいたくて………その、」
「あ、うん。何となく理解したわ」
それ以上言葉を続けられなくなったナタリアに事の経緯を察したレジウィーダが遠い目をした。そんな彼女にナタリアは涙目で謝った。
「申し訳ありませんでしたわ。まだ、未熟だった頃の物だった故……でもあの頃から少しは成長したかと思って紛れ込ませたばかりに貴女に辛い思いを………!」
「ナタっちゃん」
と、レジウィーダはポンとナタリアの肩に手を置いた。そして笑った。
「料理の腕はともかく、ネタ的には美味しかったからヨシ!」
「レジウィーダ……!」
レジウィーダの言葉にナタリアは感激したように目を輝かせる。
「何のフォローにもなってねェ……」
「寧ろ聞こえようによっては貶してないか?」
グレイとルーク(嘗ての被害者)がボソリと呟くが、幸いナタリアの耳には届かなかった。
「まぁ、結果的には無事だったから良かったって事で」
「オホホ、それもまた後の笑い話になるわねぇ」
「お前らも何か良い話だった風にしてンじゃねーよ」
勝手に締めようするヒースとタリスの頭をグレイが平手で叩いた。そんな彼らにルークも苦笑いを隠せなかった。
「あはは、最後までよくわかんぬぇ……」
「フン、ヒヤヒヤさせんじゃねぇよ」
アッシュはそう言って鼻を鳴らすとナタリア達に気付かれないように踵を返した。そんな彼にルークは静かに駆け寄った。
「アッシュ、今回は付き合ってくれてありがとな」
「別にお前の為に来たわけじゃない」
「まぁ、そうなんだけど……」
そもそも彼はレジウィーダ達によって強制的につれて来られただけなのだから。しかしルークとしては少し新鮮な気持ちでもあった。
「良かったら、また遊びに来いよ」
「………!」
アッシュは驚いたようにルークを振り返ったが、しかし直ぐに苛立たし気に顔を顰めると「冗談じゃねぇ」と吐き捨てた。
「俺は、てめぇらと馴れ合うつもりはねぇんだよ………特に、お前みたいな奴となんて死んでも御免だ」
「そ、そっか………」
知ってはいたが、やはり彼は相当己の事が嫌いなようだ。しかし知らなかったとは言え彼の本来の居場所を奪ってしまったのは事実なので、ルーク自身もそれ以上を言い返すことが出来ず、そのまま去り行くアッシュの背を見送るしかなかった。
「……………」
「あれ、アッ君もう行っちゃったのか?」
アッシュがいない事に漸く気付いたレジウィーダがそう問うと、ルークはああ、と苦笑した。
「やっぱ、忙しいみたいだな」
ふーん、とレジウィーダはそう言ってルークの顔をまじまじと見つめる。それが何だか居心地が悪かったが、レジウィーダは特に追求してくる事もなく、ルークの手を掴むとニコッと笑って自分の後ろを指差した。
「まぁ、いないなら仕方ないし、取り敢えず仕切り直そ!」
「え、仕切り直すって?」
どう言うことかと彼女の示す先を見ると、再びコンロに火をかけられた鍋を囲むタリス達がいた。
「折角の鍋だもん。今度はおふざけなしのちゃんとした伝統料理、味わってもらうからね?」
お腹一杯食べるぞー、とすっかり元気を取り戻したレジウィーダに手を引かれながら、ルークは沈みかけていた心が少しだけ暖かくなったのを感じて、自然と口元が上がったのだった。
END