A requiem to give to you
- れっつ★ぱーてぃ?2(5/6) -



「次にグレイの食べた食材だけど………あら?」

「クジがないな」



テーブルに残っている未発表のクジはあと一枚だが、グレイの食べた物とは違うらしい。タリスとヒースが揃って首を傾げていると、グレイが苦々しい顔で口を開いた。



「オレのとこに入ってたのはフ●スクっつーラムネ菓子だ」

「あのやたらとスースーするやつか」



同情するようなヒースの言葉にグレイは頷き、それから鍋の食材を食べてから一言も発していない人物を向いた。



「オイコラ馬鹿女。テメェだろこれ入れたのはよォ」

「……………」



呼ばれたレジウィーダは両手で口を押さえ、俯いている。彼女にしてはあまりにも異常な様子に全員が首を傾げた。



「おい、どうした?」



隣に座っていたアッシュが呼びかけると、レジウィーダはゆっくりと顔を上げた。その顔を見てアッシュはギョッとした。



「な、お前本当に大丈夫か!?」



本気で心配しているそれに皆も「え?」となり、一先ずヒースが電気をつけると、彼女の顔が真っ青になっているのがわかった。



「レジウィーダ!?」



肩を震わせ、額から冷や汗をかいている様は明らかな異常事態である。流石のタリスも焦って彼女に近付き、背を摩り始めると、途端にレジウィーダは全力で首を横に振った。



「……!」

「え? 嫌なの!?」

「多分、それやると吐くぞ」

「と、とにかくバケツか桶かなんかあるか!?」

「洗い場の方に確かありますわ!」



皆は大慌てでバタバタと走り出す。ナタリアは気休めだが治癒術をかけ、洗い場から近かったヒースがバケツを手に取るとグレイに投げ渡しレジウィーダの前に差し出した。



「オイ、取り敢えず飲み込めねーなら吐け」



グレイはそう言うが、レジウィーダは首を振って拒否をした。それにタリスがグレイを押し退かすと呆れたように溜め息をついた。



「人前でそうそうそんな事出来るわけないでしょう。取り敢えず、ナタリア以外はキッチンから出て頂戴」



タリスがそう言うと同時に、レジウィーダは何とか口の中の物を飲み込めたようで、全身を震わせると謎の悲鳴を上げた。



「プ※×ピ☆ヒェエエエエエエエッ!!」

『?????』



よくわからないそれにその場にいた全員が呆気に取られていると、レジウィーダはテーブルに突っ伏した。



「じぬがどおぼっだ………」

「だ、大丈夫ですの?」



満身創痍なレジウィーダにナタリアが恐る恐る尋ねる。暫くは顔も上げられない様子だったが、やがてゆっくりとテーブルに頭をつけたまま顔だけ見せたレジウィーダは未だに青い表情に苦笑を浮かべた。



「いやぁ…………未知の体験をした気分だね」

「つーか、何を食べたらそんな風になるンだよ」



グレイの問いにルーク達も頷く。吐く一歩手前に行く程の食材とは一体何なのだ、とタリスを見ると、彼女は不思議そうに最後のクジを見ていた。



「おかしいわねぇ。レジウィーダが食べたのは羊羹らしいけど、そこまで行くものかしら?」

「人によっては十分にやばいよ」

「そんなにやばいのか?」



食材を入れたアッシュが聞くと、ヒースはうーんと腕を組んだ。



「まぁ…………ただ、レジウィーダ自身餡子系は好きな方だった筈だから、ここまでの自体にはならないとは思ったんだけどね」

「……ちょっと待って」



と、間に入ってきたのはレジウィーダ本人だった。



「羊羹って、それマジ?」

「ええ、クジではそうなってるけど……」

「俺も確かにちゃんと確認してから入れてるぞ」




レジウィーダの問いにタリスとアッシュが答えると、彼女は有り得ないと言った顔をしていた。



「絶対、あれ羊羹じゃないよ。餡子の味しなかったし、何かドロドロしてたけど???」

「「「……ドロドロ?」」」

「アッシュ、マジでそれちゃんと羊羹だったのか?」



レジウィーダの表現したそれにルーク、タリス、ヒースは思考が停止した。そんな三人の様子に気付かないグレイがアッシュに問うと彼は「間違ってない」と答える。



「確かに羊羹と書かれたメモが置いてあった食材を入れた。暗くてはっきりとはわからなかったが、黒くて粘っこくて、それに何だかウネウネと動いていたように見えたな」

「「オレ(あたし)の知ってる羊羹じゃない!!」」



珍しくグレイとレジウィーダの息の合ったツッコミが盛大に入った。



「大体、羊羹は粘っこくもなければ一人でに動かないし! 何か味も甘くなければ納豆にニンニクを漬け込んでヨーグルトを混ぜたような感じだったし!」



あれは絶対に違う、と勢い良く上体を起こしたレジウィーダが力説する。しかしアッシュはそんな事は知らないので困惑するしかなかった。



「あ、あの………」



と、そこで小さく声が上がった。三人が不思議に思いながら声の主を振り返ると、ナタリアが気まずそうに両手をモジモジとさせていた。そしてそんな彼女の後ろでは何かを察したように明後日の方向を向いている残りの三人と、そんな三人に首を傾げるミュウの姿があった。
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