A requiem to give to you
- れっつ★ぱーてぃ?2(4/6) -



「よーし、次はあたしだね!」



七番目のレジウィーダがクジを引く。紙を開くと「お」っと一度目を瞬かせ、それから鼻歌を歌いながらノリノリで食材を鍋に入れていた。



「最後は俺か……」



アッシュが覚悟を決めたようにクジを引く。正直、途中で無理矢理でも出て行ってしまうのではないかと思っていただけに、ちゃんと参加しているのが不思議な感じがした。そんなルークの思いを他所に彼は書かれていた食材を取り鍋に入れ、無事に全部の追加食材が入れ終わったのだった。



「それじゃあ、ヒースちゃん。よーく混ぜて皆に分けてね!」

「はいはい」



仕方ない、とヒースが重い腰を上げておたまを手に鍋に近付く。



「何か、すごく摩訶不思議な匂いがする」

「どんなだよ、それ」



形容し難いその感想に思わず突っ込むが、ヒース自身も上手く説明が出来ないようだった。ヒースは言われた通りに鍋を掻き混ぜ、それぞれの取り皿によそっていく。鍋が空になるように皿一杯に入れられたそれは皆の前に雑に配られ、ルークもまた目の前に来た皿を手に取る。



「た、確かに良くわからない匂いがする」



部屋が暗い為、基本食材以外は正直良くわからない。元々の食材自体の味も不明な為、どんな味になっているのかも全く想像がつかなかった。

それぞれが己の前に来た皿を手に取ったところで、レジウィーダの元気な声が聞こえた。



「皆、お皿は持ったね! それじゃあ、せーので食べてみようー♪」

「熱いから気を付けてねぇ」



そんなタリスのささやかなフォロー(でもない)もありつつ、レジウィーダの「せーの」の言葉と共にルーク達は一斉にスプーンに掬ったそれを一口食べた。



「あまっ!? 固っ!?」

「…………………」

「うぶぇえぇ……」

「モチモチですわ!」

「酸っぱいですのぉ………」

「うーん………この、絶妙に……ねぇ?」

「スゥー……………はぁあああああああぁ……………」



阿鼻叫喚が響き渡った。因みに今のは上からルーク、アッシュ、ヒース、ナタリア、ミュウ、タリス、グレイである。



「いや、つーかマジで何だよこれ!?」



取り敢えず甘く、そしてとても固い。幸い、どの追加食材も出し汁には然程染み込んではいないようで汁は美味かった。だがしかしとにかく食べた物は甘かった。

タリスが皆にクジを出すよう指示し、ルーク含め七人はテーブルに紙を出す。音素灯を中央に置き、食材の答え合わせが始まった。



「ルークが食べた甘い物は………落雁ね」

「穀物と砂糖などの甘味料を混ぜて押し固めた乾燥菓子だね。煮込み時間が短かったから溶けずに済んだみたいだけど、これが溶けてたらなかなか出し汁もやばかったかもな。因みに、それ入れたの僕だから」



口直しに水を飲みながらヒースが説明する。確かに少量の甘さならともかく、この大きさはなかなか危なかったかも知れない。



「次にアッシュが食べた物だけど……あら、悪くないじゃない」

「これ、卵豆腐か?」



タリスに続き、皿を覗き込んだグレイがクジと照らし合わせて言うと、ナタリアがああ、と声を上げた。



「それはわたくしが引き当てた食材ですわ」

「ナタリア……」



と、アッシュがナタリアを向く。



「流石だ。助かった」

「まぁ、喜んでもらえたのなら良かったですわ!」



アッシュの心からの言葉にナタリアも嬉しそうである。



「それで次はヒースのだけど」

「あ、多分それ俺が引いた食材だ」



ヒースの皿入っている見覚えのある食材にルークがそう言うと、ヒースが恨めしそうにこちらを見てきた。



「何て物を……」

「あー、やっぱ駄目なやつだったんだな」

「駄目なんてもんじゃないよ。これ、単体でもキッツイんだからな?」

「まぁ、ある意味有名よねぇ」



そう言ってタリスは面白そうに笑う。グレイもまたクジの内容を見てドン引きだ。



「ジン●スカンキャラメルとか………マニアックすぎるだろ」



取り敢えず鍋には全く向いていない事だけはわかった。



「まぁ、それはさて置きサクサク行くわよ。ナタリアは………トッポギね」

「大当たりじゃねーか」

「まあ、そうなんですの?」

「鍋のヒーローだね。米や麺の代わりに入れたりもするくらいだから、出汁との相性も良い」

「そうだったんですね! とっても美味しかったですわ」



やはり聞き馴染みのない食材に首を傾げつつも、ヒースの説明で素直な感想を述べるナタリアにミュウが手を上げた。



「それはボクが入れた食材ですの!」

「そうでしたのね。ありがとう、ミュウ」

「喜んでもらえて嬉しいですの♪」



何とも微笑ましい光景であろうか。しかし当たり食材との差に素直に喜べないのが本音だった。



「次にミュウのは………酢蛸、ね。これは私が入れた食材だわ」

「とっても酸っぱかったですの……」

「まぁ、名前からしても酸っぱそうだよな」

「つーか、こいつが食っても大丈夫な食材だったのか?」



しみじみ味の想像をするルークに今更な疑問を上げるグレイ。しかしミュウはあまり気にしてないようで「みゅ?」と首を傾げていた。



(チーグルって木の実とか草を食べるんだよな? ……まぁ、大丈夫そうならいいか)



ルークは深く考えるのをやめた。



「次に私ねぇ。これは多分だけど………八ツ橋ね」

「和菓子多いな」

「まぁ、こっちの世界になるべく無い物って考えたら自然と多くなるわよねぇ」



因みに選択肢にはまだまだあったわよ、だなんて述べるタリスにグレイとヒースは選ばれなかった事を心底安堵していた。



「それでその八ツ橋ってのは誰が入れたんだよ?」

「オレだ」

「まぁ、酷い人ねぇ。仮にも恋人にそんな物を鍋に入れて食べさせるなんて」

「チョイスしたのはお前らだろ」



文句を言うな、と返したグレイは実に正論だった。
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