A requiem to give to you- れっつ★ぱーてぃ?2(3/6) -
「アッシュ、こいつらがこうなったら誰も止めれねェよ。だから今日は諦めろ」
「ふざけてんじゃねぇ。俺は時間がないんだよ!」
グレイの言葉で止まる筈もなく今にも暴れ出しそうなアッシュ。そんな彼にナタリアが途端に気まずそうに彼の腕に触れた。
「アッシュ。貴方には貴方の目的があるのはわかっております。ですが……今日だけは、わたくしの我儘を聞いてはくれませんか?」
「………っ、だが」
流石に強くは返せずに困惑するアッシュにナタリアは更に続ける。
「先の旅では貴方にはたくさん助けてもらいましたわ。貴方がいてくれなければ、わたくし達は今こうしてこの場所に帰って来る事も出来なかったかも知れません。せめて、そのお礼をさせて欲しいのです」
「アッ君、皆でワイワイするのが好きじゃないのは知ってるけどさ。ナタっちゃんは純粋に君と一緒に過ごしたいだけなんだよ。色々な事情はあるにしろ、態々こうして人払いまでしてくれてるんだし、今日くらいは良いんじゃない?」
後押しするようなレジウィーダの言葉にアッシュは小さく舌打ちをし、それから諦めたように溜め息を吐くと腕を組んだ。
「チッ、ナタリアに免じて今だけはこのくだらないやり取りに付き合ってやる」
「アッシュ……!」
「さっすがー♪ 話のわかる男は違うねー!」
「茶化すんじゃねぇ!」
アッシュの言葉にナタリアは嬉しそうに目を輝かせ、レジウィーダはよくわからない褒め言葉を飛ばしアッシュに叱られたところで、漸く(闇)鍋パーティが始まったのだった。
「それで」
と、ルークはタリスを見た。
「こっから何をすれば良いんだ?」
「それはねぇ……はい、これ」
そう言ってタリスは箱を取り出した。それにルークとアッシュが首を傾げる(その仕草がとてもよく似ていた)
「本当は自分達で好きな食材を持ち寄るんだけど、ルークとアッシュはサプライズゲストだったから何も持っていないでしょう? だからここは公平(?)にクジを引いて、そこに書いてある食材を暗闇の中で鍋に入れてもらいます♪」
「ああ、だから闇鍋なんだな」
「つまりは、何が入るかは本人以外はわからないと言う事か」
「そう言う事よ。食べてみるまで味は未知数。何が当たっても恨みっこなしの一発勝負よ」
「「それは意味が違うと思うぞ(よ)」」
眼鏡を光らせ、ニヤリと笑うタリスにグレイとヒースが突っ込んだ。
「大体、そのランダム食材ってのもお前ら三人が選んだモンだろ? 地獄の予感しかしねーよ」
「同感。流石にこのメンツでアレルギーがどうのってのはないとは思うけど、下手したら食べ物ですらない物も入ってそうでやる気出ないんだけど……」
既にげんなりしている二人にレジウィーダはチッチッチッと指を振った。
「そこは安心してたまえ諸君。半分は初心者がいる中、流石に食材以外の物はないから。折角の地球の伝統ある文化だよ? 楽しんでもらわないと損だからね」
そう言うレジウィーダにグレイとヒースは顔を見合わせる。そんな二人にナタリアも口を開いた。
「それに、今回はレジウィーダとタリスが地球から持ってきた物を追加食材として使うそうですわ。ヒース達にとっては慣れ親しんだ物ですし、それほど恐れる事はありませんわ」
「いや、別に恐れてるわけじゃないけどね??」
やはりナタリアはどこかズレていた。ヒースのツッコミを聞きつつ苦笑するルークに、未だ始まらない事に再び苛立ち始めたアッシュが声を上げた。
「それで、いつ始まるんだ? やるならさっさとやるぞ」
「オッケー! んじゃ、ルールを説明するよー」
と、レジウィーダが意気揚々と説明を始めた。
「一つ、部屋は終了まで暗くします。二つ、追加食材は一人一回で、何を入れたかはどんな物を引き当てても絶対に言ってはいけません。三つ、全員が入れたら最初の人がよく混ぜて皆のお皿に取り分けます。四つ、自分のお皿に取り分けられた物は責任を持ってしっかりと食べましょう………以上でーす♪」
「「「はーい♪」」」
「俺、もう既に嫌な予感しかしねぇや」
「「「…………」」」
レジウィーダの説明に元気良く返事をする女性陣とミュウ。参加を少し後悔し始めているルークと黙り込む男性陣。しかし時は既に遅し、部屋は暗くなり、早速最初の人からクジを引く事になった。
「最初は僕か…………せめて出汁と相性の良い物であってくれ」
そう呟くとヒースは箱に手を突っ込んでクジを引いた。手に取った折り畳まれた一枚の紙を近くの音素灯の側で開き、それから無言で食材が用意されているエリアに取りに行くと、最後まで何も言わずに鍋にそれをぶち込んだ。
(何も言わないのが逆に怖え……)
ルークはそんな事を思いながらも次は自分の番が来てクジを引いた。紙を開き、書いてある食材は知らない物だった。取り敢えず食材の置いてある場所へ行き、並べられている食材の側に置かれているメモを見ながら同じ名前の物を見つけて鍋に入れた。
「次は私ねぇ」
三番手はタリスだ。ニコニコと笑顔を浮かべながらクジを引き、中身を見ると特に大きな反応もなく食材を手に取ると鍋に入れた。
「次はミュウですの!」
四番手のミュウは流石にクジが上手く引けないので、レジウィーダが代わりに引いて渡していた。受け取ったクジを見て、ミュウは首を傾げながらも食材を取りに行くと丁寧に鍋に入れたのだった。
「気が進まねェ……」
面倒臭そうなグレイが徐にクジを引く。手に取った紙に書かれた内容を見て、それからとてつもなく嫌な顔をしていた。しかしルールはルールだ。グレイもまた黙って食材を取りに行くとやはり嫌そうな顔を隠さずにそれを鍋に入れていた。
(一体何が当たったんだろう……あの反応的に絶対に良い物じゃなさそうだよなぁ)
せめてそれが自分に取り分けられない事を祈るしかなかった。
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