A requiem to give to you
- 語られなかった隙間(3/4) -



【グレイとタリスとティア】
※前ページの続き



「ど、どうしたのそれ!?」



今までどこかへ行っていたらしいティアがグレイ達のいる部屋へ戻り、こちらを見ての第一声がこれである……が、それは正しい反応で、見知った人が突然体の一部が大きく変わっていたらこんな反応にもなるだろう。

グレイはティアが気になっているであろう金色になった右目に触れながらあっさりと答えた。



「ああ………なんか染まった」

「そ、そんな急になるの?」

「やろうとすればなるもンじゃねーの?」

「大佐ならわかるかも知れないけど、私の知る常識内ではわからないわ」



そう言って本気で考え出したティアにタリスが苦笑した。



「ティア、ふざけているだけだから本気にしないで。グレイも揶揄わないのよ」

「別に揶揄ってるつもりはねーけど」



タリスの言葉にティアは少しムッとした表情でグレイを見たが、そんな本人はどこ吹く風だった。



「ま、別に今のところは色が変わったくらいで何ともなさそうだけどな。正直オレにもなんでこうなったのかわかんねェ」

「そう……でも何ともなさそうなら、良いんだけれど」

「安心してティア」



そう言ってタリスがグッと親指を立てた。



「何かあったら強制的に病院に送り込むから♪」

「お前のその言い方だと別の意味に聞こえるンだよな」



どことなく身の危険を感じたグレイがそう言うが、ある意味いつも通りのやり取りにティアは漸く安心したような表情を見せた。



「それにしても。前々から思っていたのだけれど、貴方達ってやっぱり変わってるわ」



あ、悪い意味じゃないのよ。と言ってから一言訂正を入れてティアは続ける。



「偶に私達の想像し得ないような考え方をしたり、見た事もない物を使ったり、聞いたことのない言葉を言ったり………今思えば、それってやっぱり貴方達がこの世界の住人ではないからって事なの?」



そんな彼女の問いに頷いたのはグレイだった。



「全部が全部それが原因ってわけでもねーけど、後半部分に関しちゃそうだな」

「寧ろ前半は私達の性格の問題もあるんじゃなかしら?」

「わかってンじゃねーか……いや何でもないです」



タリスの言葉に頷くものの背筋が冷える気配を感じて慌ててグレイは謝り、それから軽く咳払いをした。



「何だかんだで知ってるヤツが多いけど、オレ達は確かにこのオールドラントとは全く違う異世界から来てる」

「そうなのね。どのくらい前からになるの?」

「この世界の計算では約二年ほどになるかしら。最初はタタル渓谷に飛ばされてねぇ。それからトゥナロとか言うどこかの似非神父(?)のお陰でバチカルに飛ばされて、先にそこにいたヒースと合流した感じかしら」



今思い出してもあの男には碌なことをされた覚えがないわ。

そう言ったタリスの背後に何かが見えた気がしたが、それをスルーしてグレイは先程の彼女の言葉に突っ込んだ。



「お前、それは初耳だぞ。そんな前からあの野郎に会ってたのかよ」

「言ってなかったもの」

「いや何でだよ。場合によったら帰るヒントになるかも知れねーだろ」

「だって…………ねぇ?」



どことなく言いたくなさそうにしている彼女に何かを察したのか、グレイは一先ずそれ以上の追求はやめて「別にもう良いけどよ」と溜め息を吐いた。



「トゥナロ……?」

「ティア? どうしたの?」

「いえ………何だか聞き覚えがあるような気がしたのだけれど、ちょっと今は思い出せないわ」



ごめんなさいね、と申し訳なさそうに謝るティアに二人は構わないと首を振った。

それからグレイは思い出しように声を上げた。



「てか、ぶっちゃけ今誰がオレ達のこの情報を知ってるんだ?」

「そうねぇ……。ルーク、ガイはその場にいたから説明しているし、ナタリアも後に伝えてあるから知っているわ。あと……フィーナね」

「ああ、あの女か。こっちはヴァン、ディストを初めとした六神将全員とフィリアム、それから導師。アニスはこの間聞いたくらいで説明はしてねーな」



もしかしたらヒース辺りが旅の途中で伝えてるかも知れねーけどな。



「そうなると、わからないのは大佐さんねぇ」

「アイツは多分………いや確実に知ってるだろ」

「どうしてそう思うの?」



グレイの言葉にティアが首を傾げると、それにはタリスが答えた。



「まず一つ目は、私、ルーク、ティアの三人で初めてタルタロスに来た時に、私だけ別室に行かされたでしょう? その時に軽く尋問を受けた時に聞かれたのよ」



“何処”から来たのですか、と。



「自己紹介でだってルークの使用人だって言ってるのに、態々別室で聞く事がそれなのよ? もしかしたら過去にも事例があったのかなって思ったりもしたけど、でもそんな微粒子レベルの事例なんて実際に見てみでもしなければそんな質問は出ないと思うの」



でも本当にそれだけだから、確証はないとタリスが肩を竦めるのを見て、グレイが続けた。



「後はあの馬鹿女とのやり取りと、ディストの野郎の言ってたことだな」

「あら、あの人何か言ってたかしら?」



確かにディストは知っている部類に入るが、それがジェイドがそちら側であることに繋がりが持てずにいるタリスにグレイは「それこそ確証はねーけど」と前置きをした。



「ディストとジェイドは所謂幼馴染らしい。ディストは馬鹿女のレプリカであるフィリアムを作った張本人でもあるからな」

「そ、そうなの!?」

「確かに彼は譜業にはとても詳しいと聞いていたけれど……そんな事まで出来るのね」



グレイの言葉に二人は衝撃が隠せず驚きの声を上げる。



「ま、作った理由を含めてそこら辺は一度しっかり洗わねェとならないところだ。そうすりゃ、自ずとジェイドが何をどこまで知ってるのかもわかるだろ」

(ま、あの野郎が《鍵》を持ってるっつー時点でほぼ答えが出たようなモンだろうけどな)



心に留めたその言葉は呟かれることをはなく、グレイは彼の死霊使いを思い出して舌打ちをした。

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