A requiem to give to you
- キッカケの話(5/6) -



【タリス】

それから暫くは聖の指導の元、涙子のキャラクター作りが進んでいた。三人でああでもない、こうでもないと言いつつも漸く形が決まると、涙子は達成感に満ちながら決定ボタンをクリックした。



「出来たわ……!」



名前:タリス Lv.1

ジョブ:アーチャー

ステータス:××××××
      ××××××
      ××××××
      ××××××

装備:なし

所属ギルド:なし



画面上には初期装備だが、水色髪の可愛らしい少女のキャラクターが出来上がっていた。



「なんだかとってもファンシーだ」

「良いのよ。ゲームだもの」



どうやら満足のいく出来になったようで、涙子はご満悦だった。そんな涙子を見ていた宙は、初めはそこまでなかった興味に火がつくのを感じていた。



(すごい……こんな風に自分の思い描いたものが簡単に出来るんだ……!)



化学では成せないファンタジーも、夢も、簡単に形にする事が出来る。勿論、あくまでも仮想現実だから実際にゲームの中で完結するものだが、それでも世の人々が夢中になるのも、なんだかわかる気がした。



「タリスって名前も、キャラに合ってて良いね!」

「ありがとう! 早くこれを動かすのが楽しみだわ」



キャラが出来たのなら直ぐに遊びたい所だろう。しかし、何だかんだと時間はそれぞれの門限に近付いていた。



「続きは家に帰ってからになるわねぇ」



そう言って名残惜しそうにデータを保存して、涙子はパソコンを閉じた。それに合わせるように聖も自分のパソコンの電源を落とす。

それから聖は宙を向いた。



「宙、大体のやり方はわかった?」

「うん、とりあえずはね。キャラクター作りだけだけど」

「まぁ、その他のやり方については後で通話しながら教えるよ」

「ありがとう、聖ちゃん」



素直にお礼を言うと、聖は「まだ始まってすらいないよ」とやんわりと返した。

.
/
<< Back
- ナノ -