A requiem to give to you- 蕉鹿の夢(3/4) -
そんな二人のやり取りを見つつ、一つの疑問を覚えた者がいた。
「でもさ、何でミュウとレジウィーダはここにいたの?」
アニスがそう問えば、数名を除き仲間達は驚いた様にレジウィーダを向いた。どうやら今までその事に気付かなかったらしい。感動の再会(?)をしたタリスやルーク達でさえ、だ。
「そう言えば……何でだ?」
「何だかごく普通にいたから、疑問に思わなかったわね……」
と、ガイとティア。
「ジェイドの言う通り、本当にいつの間にか帰ってきましたね!」
「そうですけどね! あんまりにも自然過ぎて逆に驚きですよ」
嬉しそうに微笑みながら言うイオンとそれに突っ込むアニス。それぞれの反応にレジウィーダは笑った。
「クラスに溶け込むのは得意ですから!」
「クラスじゃないし、転校とはまた溶け込むの意味合いが異なるけど」
「まぁ、確かに"居て当たり前"の雰囲気を作るのは上手よねぇ」
ヒースとタリスの言葉に一同うんうんと頷いた。そして……
「それでレジウィーダ、貴女は何故このコーラル城にいたのですか?」
ジェイドによって話は引き戻される。しかしそれは誰もが気になっていた事なので、口を挟む者はいなかった。レジウィーダはうーんと顎に手を当てた後、難しい顔をしながら口を開き、
「あたしにも全くわからないんだよね」
と言って苦笑した。それに再び何人かが脱力したように肩を落とした。
「わかんねえって、自分の事だろうが」
「うん、でも本当にわからないんだよ。カイツールで間違ってミュウを踏んだ拍子にすっ転んでさ、そのまま気絶しちゃって……次に気付いたらここにいたんだよなー」
と、レジウィーダは肩を竦めながら言う。話の途中で何やら不穏な言葉が聞こえたような気がするが、そこは敢えて何も言わずにジェイドは次にミュウを振り返った。
「ミュウは何か覚えていますか?」
「みゅみゅ〜僕にもよくわからないですの〜」
申し訳なさそうに耳を垂れ下げて答えられ、一同は首を捻った。
「じゃあ、誰が連れてきたんだ?」
「六神将……しかいないんじゃないかしら」
可能性的に、とヒースに続けて言ったタリスの言葉にそれしかないよなと皆が納得しかけたところで、レジウィーダ本人がそれを否定した。
「その六神将にも、何であたしらがここにいたのかわからないんだって」
「えー……じゃあ、もうどうしようもないじゃん。誰にもわからないんならさ」
「つか、もう良いだろ」
お手上げ、と言いたげなアニスの言葉に疲れたような声でグレイが口を挟んだ。
「考えてもわかンねー事をいつまでもグチグチと……。それは今ここで話す事かよ」
それにヴァンも同意した。
「確かに、今は早く整備士を軍港に連れ帰る事が先決だ。この事については、後でゆっくりと考えれば良いのではないか?」
ヴァンがそう言って皆は一度顔を見合わせた。その顔はあまり納得してはいないようであったが、優先順位を考えると大人しく頷くしかなかった。
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
それからまた歩き出し、今度こそ城を後にした一行を天井に開いた大きな穴から眺めている者がいた。その者は皆がいなくなった後も暫し静かに立っていたが、やがて己の後ろに現れた者の気配に振り返った。
「うっ……うっ……アリエッタァァァァ……あんな可哀想な事になって………ぐすっ」
「…………………」
振り返った先には何故か大号泣していた仲間がいた。途端に頭が痛くなり、その者は思わず溜め息を吐いた。
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