A requiem to give to you
- It is vague and is opaque(4/5) -



「二人とも、お互いをとっても大切に思っているのはよくわかるんだ。少なくとも、自分の身を顧みる事なく相手の為に突っ込むくらいには」



でも



「やっぱり何か違和感があるんだよ。あの二人って。まるで……」



まるで、空いた穴を埋めるかのようなどこか偽り染みたモノに感じてならない。



「お互いに一緒にいながら、いつも何か別の物を探してるように見えるんだよ。"こっち"に来てからは特にそんな感じがするの」



と、レジウィーダは言うが、ルークにはそれを肯定も否定も出来なかった。それでもレジウィーダは構わず二人に視線を戻しながら言った。



「あたしは、あたしの大切な人達に幸せになって貰いたいんだ。あの二人にも……だからどちらかじゃなくて、どちらにも笑っていて欲しいなって思う」



そう言葉を紡いだレジウィーダは口元こそ笑ってはいるが、何故だか悲しそうにも見えた。ルークにはそれが何だかとても気分が悪くて、舌打ちをした。



「それを……俺に言ってどうしろっつーんだよ」



あの二人をくっつけるのを手伝えってのか、と言おうとしてその言葉を呑み込む。しかしレジウィーダは彼の言いたい事がわかったのか、首を横に振って否定した。



「何かをするのなら、それはあたしじゃなくて君次第だと思うよ。そうじゃなくて……あたしはただ、君に聞いて欲しかっただけなのかも知れないね」

「どう言う事だよ…?」



首を傾げながらそう問うと、レジウィーダは二人からルークに向き直って苦笑を浮かべた。



「笑顔は幸せの象徴なんだって。あたしは皆の笑顔を見るのが好き。幸せな姿を見るのが……大好きだ」



…………でもね、



「時々……本当に時々だけど、幸せになって欲しいと願えば願うほど、苦しい時があるんだ」



どうしてだろうね。そう言ったレジウィーダを直視出来なくて、ルークは再び俯いた。どうしてと問われたところで、ルークはその答えを持ち合わせてはいない。けれどいつものように「知らねぇよ」と蹴る事も出来ないでいた。



(どうして……だって? そんなの……俺が知りてぇっつーの)



どうしてこんなにも苛立つのかも、レジウィーダの言葉に耳を塞ぎたくなるのかも……どうして、こんなにも息苦しいのかも。

……いや、心のどこかではわかっているのだと思う。認めたがらない己の意地の意味も、目の前の少女が自分に聞いて欲しいと思った理由も……全部……全部。けれど認めたら、きっともっと苦しくなる。そんな気がした。やる瀬ない気持ちをどうにか押し込めようとして、レジウィーダを一瞥すれば申し訳なさそうな黒い瞳と目が合った。



「何、……見てんだよ。んな顔で見んじゃねぇよ……っ」



レジウィーダが態々自分を追い掛けてきてまであんな話をしたのも、今のこの視線の意味も……全てが同情じみていて、ルークは苛立たしげにもう一度舌打つと彼女から背を向けた。



「何勝手に同情してるか知らねぇけどな、タリスは友達であって、それ以上でも、それ以下でもないんだよ」

「…………!」



だからタリスとグレイが恋人同士だろうが、それによってどうなろうが、自分には関係がない。精々話を聞いてやるくらいだ。



「ルーク、あのさ―――」



何かを言い募ろうとするレジウィーダの言葉を遮り、ルークは一言「それだけなんだよ」と呟くと、これ以上何も聞きたくなくてその場を後にした。


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