A requiem to give to you
- Wretched wolf(4/4) -



「でもそれで私を姉と重ねていた、と言うところかしら」

「まぁ、そんな所かねェ」

「……………」



肩を竦めながら返すと、途端にリグレットは黙り込んでしまった。



「どうした?」

「お前は……家族が恋しくなったりするか?」

「……なんで?」



どうしてそんな事を訊くんだ?

そう問うとリグレットはハッとしたような顔をし、直ぐに首を横に振った。



「いや……何でもない。変な事を聞いたわね。今のは忘れてくれて構わない」

「……………」



それに今度はグレイが黙り込んだ。リグレットの質問の意図は何となく、わからない訳ではない。けど、自分の考えを言う事で、恐らく彼女を傷付け兼ねない。それを思うと何となく、答え辛かった。



「……別に、恋しくはならねーよ。あんな奴ら」

「! そうか……」



ほら、やっぱり傷付いた、とグレイはどこか他人事のように思った。

…………けど、



「でも、それはあくまで"また"会えるってのを知ってるからこそ、そう思えるだけの事だ」

「……!」

「それに、家族を………………大事に思ってなかったら、そもそも話題にすら出さねーだろ。あんたも、オレも」



まぁ、相手も同じ様に思ってくれているとは限らないけど…………とまでは言わなかった。滅多に笑う事のない目の前の女性が嬉しそうに笑うのを見てまで、それを言う気にはなれなかった。

彼女にとってその"家族"はとても大切な存在なのだろう。とても大切で、大事で、掛け替えのないモノ。それは彼女の様子からよくわかった。








それに少し……ほんの少しだけ、彼女とその家族を羨ましく思った。だが直ぐにハッとすると頭を振った。



(………ったく、らしくねェ)



今この場に隣の部屋で倒れている奴らがいたならば、盛大に馬鹿にされそうだ。更には「ホームシック」とか「ファミコン」とか言って激しく勘違いされると言う、非情に嬉しくないオプション付きだ。……最悪過ぎる。



「チッ……」



思わず舌打ちをしてリグレットを見れば、どうやら塩にぎりを作るのに夢中なようだ。だが、この様子ならもう大丈夫だろう。グレイはそう思うとそっとキッチンを後にどこかへと消えた。













END
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