A requiem to give to you
- 夢と現の追複曲(3/3) -



「そンじゃあさ、もし……もしだぞ?」



これならどうだとばかりに言葉を紡ぐグレイは一旦、間を置くと神妙な顔付きで続けた。



「もし、………お前が誰かを好きになるとしたら、それってどっちを好きになるんだ?」

「どっち、て?」

「あー………」



ある程度予想はしていたのだろう、キョトンとして首を傾げたフィリアムにグレイは先程よりも更に言い辛そうに悩ましげな顔になった。



「そうだなぁ……例えば、お前がコイツと一生側にいたいって思えるような、まぁ、要するに恋ってヤツだよな。お前が恋をしたら、それは男と女どっちになるのかなって……」



事を訊きたかったんだが、と最後の方は消えそうな程小さな声でそう言うと、言わなきゃ良かったと後悔したように頭垂れた。正直、自分が訊かれて困るような事を相手に訊くなど、普通はしない。しかもフィリアムの場合はかなり特殊だ。本人だって内心どうであれ、答えたくはないだろう。

しかしそんなグレイの考えを余所に、フィリアムは特に嫌な顔もせずに答えたのだった。



「それは、まだわからない……けど、その時は……その時なんだと思う」

「お前……」



その言葉にグレイは目を見張った。それでもフィリアムは続けた。



「前にも言ったけど、俺が姉貴のレプリカだからと言って、被験者と同じ性格や癖になる訳じゃない。だから、俺が今後誰かを本当に特別だと思えるのが異性であっても同性であっても、それはその時の俺次第になるんだと思う…………なんて」



正直、俺もよくわからないんだけどさ。

そう言って苦笑を漏らしたフィリアムにグレイは暫し考える素振りを見せると、やがて「そうか」と言って既に被験者よりも高い位置にあるその頭に手を置いた。



「お前、すごいな。大人だよ………オレ達なんかよりもずっと」

「そんな事、ない」



そんな事はないよ、ともう一度呟くフィリアムの頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。



(猫みてェ……あ、そう言えば)



彼の被験者も頭を撫でられるのだけは好きだった事を思い出した。勿論、自分はやってやった事はないが。



「なぁ、」



呼び掛けると「なに?」と返ってきた。



「いつかお前が本当に心から大切な人ってのに出逢えたら、その時はオレにも紹介しろよな!」



そう言って一度グシャグシャに撫ぜてから手を離せば、どこか恥ずかしそうな顔を覗かせたフィリアムが小さく頷いた。



「……うん」















END
/ →
<< Back
- ナノ -