「君らってさぁ、あまり変わんないよねー」
始まりは宙のこの一言だった。
昼休み、とある中学校の屋上では仲良し四人組がお弁当を広げていた。冬が明けたばかりだが、この日はとても暖かい陽気で、ジッとしていればその内寝てしまいそうだった。そんな中での彼女の一言に、"君ら"と言われた内の片方……涙子はサンドイッチを食べていた手を止めて首を傾げた。
「なにが?」
そう問い返すと、宙は少し困ったような顔をした。
「なんて言うのかなー……。君らって一応恋人同士だろ? その割には、その……」
「それ程進展した動きが見られないって、言いたいんだろ?」
言い辛そうにする宙の代わりに黙々と陸也の弁当を漁り食いしていた聖が言った。それに涙子は漸く納得が言った様子だった。
「ああ、そう言う事ねぇ」
確かにこの二人は付き合い始めてから少なくとも一年は経っている。しかしこの二人は特にデートする訳でも、キスをする訳でも、況してや手を繋いで登下校する訳でもない。端から見れば本当に付き合っているのかわからない程、今までの友達感覚と変わらないのだ。
「それにこう言う時間だって二人で過ごしたりしないで、普通にあたしらも誘うし」
それにホイホイと着いて行く方も方なのだが、とは言わない。
「そう、言われてもねぇ」
「ま、唯一変わった事と言えば……」
苦笑を漏らす涙子を余所に、二人は彼女の背に寄り掛かって船を漕いでいる陸也を見た。
「コイツが君にここまで甘えるようになったくらい、か」
「これって甘えに入るのか?」
十分、と聖は深く頷いた。
「だって陸也だぞ? 普通だったらここまで誰かにずっとくっ付いてたりしたがらないって」
「そう言われれば……そうかも知れないけど」
そう言って宙は陸也の前まで来ると、その寝顔を覗き込んだ。
「うーん、コレがコイツなりの応え方って事なのかねー?」
「………何がだよ」
「!?」
うわ、と突然目を覚ました陸也に宙は慌てて飛び退いた。それに陸也は不機嫌そうに顔を顰める。
「いきなり何だ……つーか、人の事ジロジロと見てンじゃねーや」
「別にジロジロなんて見てないし!」
自惚れんなや馬鹿男、と吐き捨てる様に言うと、陸也は「なんだと」と立ち上がろうとした……が、それを涙子が止めた。
「止めなさいよ。今はお昼食べてるんだから」
「……………チッ」
舌打ちしながらも素直に立ち上がるのを止め、再び涙子に寄り掛かった。そして入れ替わるようにその様子を見ていた聖が立ち上がった。
「さて、僕はこれから図書室に行かなきゃいけないから、先に戻るよ」
「……一人で平気か?」
陸也がそう言うと、聖は肩を竦めた。
「業々、図書室にまで"勉強しに来る真面目な奴"なんかいないだろ」
「えー、あたしがいるよっ☆」
「「「…………」」」
「え、ちょっと何でそこだけ無言になんの? すっごい傷付くんですけど」
ショックを受けた顔で宙そう言うと、陸也は溜め息吐いた。
.