A requiem to give to you
- 拝啓、古き友へ(3/3) -



「それって君の監督不届きだよね」

「何言ってるんだ。お前も知ってるだろう? オレはもうその頃にはとっくに教団から除外されてるんだからよ」

「よく言うよ。逃走した、の間違いだろ。全く……君の良い加減さにはほとほと呆れるよ」



これじゃあ、君のいた師団の人達が可哀想だ。



「なんだ、怒ってるのか?」

「当たり前、どうせ殺すならもっと徹底的に取り組んで欲しかったね」

「いや、そっちかよ」



やたらと刺々しいクリフの言葉に今度はトゥナロの方が呆れる番だった。



「あのな、もしあの時期で導師が暗殺なんてされてみろ。お前だって今"此処"に居られないかも知れなかったんだからな」

「………それは」



トゥナロの言葉にクリフは押し黙る。クリフは導師イオンとはとても深い関わりがある。彼がどうしてここまでイオンに対する嫌悪を表しているのか、トゥナロにはその理由がわからないでもない。しかしそれを受け止めてあげるには、トゥナロでは荷が重すぎるのだ。



「まぁ、とにかく。お前の思いはどうであれ、それをあいつ……レジウィーダには言うなよ」

「………わかってるさ」



言えばまた煩そうだからね、と呟く。

その時、遠くから話し声が聞こえてきた。



「早く行く、です」

「だから何でボクまで……アイツを誘えば良いのに」

「だってアリエッタのお菓子……それにレジウィーダは何だか体調が悪いみたいでお部屋で寝てるんだもん」

「だからって……」

「二人とも、早く行かないとなくなるんじゃないか? あの…何とかの限定お菓子」

「! チーグル製菓雪祭りフェアの『まっしろトリュフ』! シンク、フィリアム早く行く、です!!」



そう言って慌ただしく過ぎ去って行く三人を見、トゥナロは「チーグル製菓雪祭りフェア」と言う言葉にその金色の隻眼を光らせた。



「よし、ちょっくら行ってくるか」

「ちょっと、レジウィーダへの説明は?」

「任せた」




グッと親指を立てながら言うトゥナロにクリフは口元を上げると、



「死・ネ・☆」



盛大な悪態を吐いて教会へと戻っていった。それを図らずも見送る形となったトゥナロは肩を竦めた。



「全く……まだまだガキだな、アレも」



まぁ、変に大人びた態度を取られるよりは余程可愛いげがあるのだが。そう呟くともう一度だけ墓石を振り返り、苦笑した。



「でもまぁ……今度こそ、本当の意味で自由に飛び回れるのなら、それでも構わない……だろ?」













あれから貴方も私も"自由"を手に入れました。

鳥の様な立派な翼はありませんが、どこにでも行けるし、見れる心と体があります。

地を歩き、沢山の記憶を刻めます。

まだまだ"貴方"達と過ごした日々の方が新しいですが、これからは新たな友らと共に、新たな記憶を刻んで行きます。

"貴方"への手紙はこれで最期となるでしょう。

貴方は私にとって、どうしよもなくてとんでもない奴でした。

昔から今に至るまで散々に私をアホだバカだと言ってますが、貴方も同じ部類だと思います。

でも、だからこそ言えます。貴方は……














とても大切な、永遠の友です。

もし、次に貴方が"貴方"として会う事が出来たなら……また馬鹿笑いの一つでもしましょう。

それでは一旦、サヨウナラ












敬具
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