A requiem to give to you- れっつ★ぱーてぃ?(4/4) -
その時、遂に地獄逝きを知らせる扉が開かれた。
「まぁ、皆さんお揃いでしたのね! ………ヒースはどうなさいましたの?」
湯気を立て、美味しそうな香りを漂わせる紅茶の入ったポットと幾つものカップを持って入ってきた王女ナタリアは氷像となり果てた勇者3のヒースの姿を見て首を傾げた。
「ああ、これはタリスが……」
「待ってる時間が惜しくてラジエイトゲートを裸足で散策していたらこうなってしまったそうよ」
「どんな無茶苦茶な嘘吐いてんだよお前!」
吐くならもっとマシな嘘吐けよ、と突っ込む勇者1のルークを余所に、意外にもあっさりとその嘘を信じてしまった王女ナタリアは「そうでしたの、残念ですわ……」と悲しそうに眦を下げた。
(って、アレ……? これって………)
勇者2のガイと勇者3のヒースは動けない。譜術使いのタリスは絶対に食べないだろうし、メイドのフィーナに無理させて負担をかける訳にはいかない。………と、言う事は必然的にこのデモンズ・メルト軍団を食べるのは勇者1のルークの役目となる訳だが……
(え、コレ………俺終わったんじゃね?)
「さぁ、ルーク! ヒース達の分も含め沢山ありますわ、どうぞ召し上がって下さいな」
悪魔の囁きに最期の最期に期待を込めて譜術使いのタリスを見れば……
「ごめんなさいねぇ、ナタリア。先程奥方様とお茶をしてきたばかりだから、お腹が一杯で……」
「まぁ、そうでしたの。それなら仕方がありませんわ」
ニヤリと、人の悪い笑みをこちらに向ける。この野郎……。
勇者1のルークは再びデモンズ・メルト軍団に目を向ける。王女曰く羊羮と宣うソレは相も変わらず気持ち悪い動きを繰り返し、まだかまだかと言うように皿の上を躍り続けている。
「〜〜〜〜っだぁあああもうっ、わかった!!」
ここは男を見せる時。グッと勇者1のルークはフォークを握り締め、デモンズ・メルト軍団に挑む。
「勇者ルーク、行くぜッ!!」
ガッとフォークでそれを刺し、思いっ切り口の中へと放り込んだ。
『…………………』
周りで息を呑む音が聞こえる中、勇者1のルークはただひたすら無言で口をモグモグと動かし、それを噛み砕く。そして最期にゴクン、と飲み込むと………
「………父上、母上………不出来な息子は、ここまでのよう……で、す…………」
バタリ
「ルーク様ぁあああああああああっ!!」
バチカルでもっとも高い国王のおわす城のある一室で、勇気ある若者達の光が消えた。
《勇者1のルークは倒れた》
「まぁ、こうなるわよねぇ。普通」
「次こそ頑張りますわ!!」
END(死)