A requiem to give to you- れっつ★ぱーてぃ?(3/4) -
「あの……これは何か大きな事件にでも遭いましたのでしょうか?」
「ああ、もう事件だよ。現在進行形で起きてるよ、事件」
首を傾げて心配そうに問われた言葉に勇者1のルークは苦渋の表情で頷いた。因みに事件の元凶である王女ナタリアはお茶を淹れに行っている為にいない。逃げるなら今なのだが、その場合は後が怖い為に出来ないでいた。全くもって情けない話だ。
「パーティ、ですよね?」
「ぱーてぃだな、地獄の」
メイドのフィーナはチラリと床に倒れているモノを見る。
「それでこのガイの状況は……」
「勇敢に立ち向かった勇者の成れの果てです」
勇者3のヒースが明後日の方向を見ながら答えた。その顔に生気は篭っていない。完全に諦めモードだった。何とも言えない空気が三人を包み込み、やがて耐え切れなくなった勇者1のルークは叫けんだ。
「ヒースーーーーーーー! 何とか何ねぇのかよ!!」
「……無理」
「諦めんな! お前勇者だろ!? 立ち向かえよ、ガイの死を無駄にする気か!?」
「その言葉、全部サンタさんのプレゼント袋に入れて君に投げ返すよ。第一、王女は君の許嫁だろうが!!」
「煩ェッ、友達だろ!? そこはその……アレだよ、皆で分け合おう?みたいな」
「何それ気持ち悪い。大体こんな物皆で分けてどうするつもりだ。全滅するだろ」
だからここは一人でも生き残るためにも〜云々と述べる勇者3のヒースにメイドのフィーナも手を上げた。
「あ、それでしたらわたしにお任せ下さい。わたし、第七音譜術士で治癒術も心得ていますので、安心して召し上がっても大丈夫ですよ」
「待てぇええっ!! それ全然安心出来ぬぇから!」
「全部食い切る前に死にますから、コレ」
そう言って勇者3のヒースが皿の上のデモンズ・メルトを見れば、奴は気持ち悪い動きでウネウネと皿の上を踊っていた。
「う………嘔吐感が」
「うわぁあっ、吐くなよ! 頼むからここで吐くなよ!? ナタリアにどやされるの俺なんだからな!?」
「じゃあ、トイレ……」
「ふざけんなっ、とか何とか言って逃げるつもりだろ! そんな事はさせねぇぞ」
「ルーク様、滅茶苦茶ですわ」
青い顔をして口元を押さえる勇者3のヒースの服を掴み引っ張る勇者1のルークに苦笑してメイドのフィーナは言うが、正直笑っている場合ではない。勇者3のヒースの限界は直ぐそこまで来ている。
「ルーク……離せ、マジ……無理吐く……」
「わぁあっ、吐くな! 耐えろ! 落ち着けぇええっ!?」
「いや、お前が落ち着け……」
「じゃあ、ヒースが吐かないでここに居られれば良い訳ね?」
「ああ、頼む! 俺一人でこいつに挑むのは無理だからーー─────って、え?」
突然入ってきた第三者の言葉に思わず頷いてしまった勇者1のルークはハッとして声の主を振り返った。
「氷の渦に呑まれよ、───アイストーネード!!」
「は? ちょ、ま──────」
カチン
「フゥ、これで良し」
一息吐いてそう言ったのは譜術使いのタリス【Lv.10】だった。ルークの横で氷の像と化した勇者3のヒースを見て清々しいまでの笑顔を浮かべていた。
「って、ヒースーーーーーーー!? オイッ、しっかりしろ!!」
《勇者3のヒースは返事がない、ただの屍のようだ》
「おまっ、タリス! 何すんだよ!?」
「あら、だってここ居て欲しかったんでしょう? 吐き気も止まったし、結果オーライじゃない」
「全然オーライじゃぬぇっつーの! 吐き気どころか息の根が止まるコレェ!!」
キョトンとする譜術使いのタリスに盛大にツッコミを入れる勇者1のルークに……動かなくなった勇者3のヒース、どうしたら良いのかわからずにオロオロとするメイドのフィーナ。完全に召集が着かなくなっていた。
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