A requiem to give to you
- 迷宮の教会・ダアト(4/4) -


反らした視線の先には少年が踵を返してどこかへ行こうとする所だった。レジウィーダは慌てて声を掛けた。



「あ、待って!」



少年は足を止めて顔だけ振り返った。



「ありがとね! 君のお陰で無事に戻ってこれたよ」

「……ふん、次は精々迷子にならない事だな」

「ガンバリマス……」



肩を落としながら返すと、少年が用はそれだけかと言いたげに見てきたので、レジウィーダは「そうだ」と言って続けた。



「あたしはレジウィーダって言うんだけど、良ければ君の名前も教えてくれない?」



それに少年は一瞬面倒臭さそうに顔を顰めたが、相手の期待に満ちた眼差しにうっとなるとやがて小さく口にした。



「………………アッシュ」



本当に小さな声だったが、それでもレジウィーダ達の耳にはしっかりと聞こえていた。



「アッシュだね! うん、覚えた!」



よしっ、と両拳を作るレジウィーダを尻目にアッシュはグレイを見た。



「お前は」

「ん? あぁ、オレ?」



自分に話し掛けられたのだと気付いたグレイは指で自分を指しながら訊く。するとアッシュから「自分も名乗ったんだからはよテメェも名を言え」と言う無言の圧力を受けた。



「オレはグレイ・グラネス。まぁ、お前は特別にグレイ様と呼ばせてやっても良いぜ?」

「誰が呼ぶか!」

「てか、アホじゃん」



全否定のアッシュと呆れ顔のレジウィーダに彼はケラケラと笑った。



「まぁまぁ、これから何かと会う事になるかも知ンねーし。よろしくしよーぜ」

「ふん、くだらん馴れ合いは嫌いだ」



そう言い捨てるとアッシュは今度こそ去っていった。



「あーあ、行っちゃった」

「あれも神託の盾みてーだし、また会えンだろ」

「ま、そうだけどねー」



そう言うレジウィーダの顔は、この世界に来てから出来た初めての友達(?)にどこか嬉しそうだった。



「…………で」



その嬉しさに水を刺すようにグレイの一言が入った。



「肝心のディストに会えたのか?」
























………………。



















「おーい、ヒデェ顔してっぞ」



言葉にするのも難しい表情で固まったレジウィーダの目の前でグレイが手をヒラヒラさせると、途端にハッと我に返って頭を抱えた。



「忘れてた………」

「馬鹿だろお前」



グレイの容赦ない突っ込みが入る。レジウィーダは俯いて黙っていたが、直ぐに顔を上げると無言でグレイの腕を掴むと勢い良く走り出した。



「オイ! いきなり何しやが……」

「2ndチャレンジだ!」

「はぁ!?」



冗談じゃねー、面倒臭ェ、テメェ一人で行け、と必死に否定するグレイだったが、レジウィーダはあはははと笑った。



「旅は道連れ世は情け! 一人より二人、三人寄れば文殊の知恵! って、事でアンタも手伝えー!!」

「ふざけンなぁああぁあぁぁっ!!」



つーか三人もいねー!!と叫びつつレジウィーダに引き摺られて行くグレイの声が教会の迷宮とも言える廊下に響き渡った。












To be continued...?
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