A requiem to give to you- 鳴泣の教会・ダアト(7/7) -
「まぁ、良いじゃねーかよ。結果、あれ以来幽霊騒ぎも収まったし。導師もちゃんと寝れてるンだろ?」
「そりゃ、そうだけどさ……」
そう言うもやはりレジウィーダは腑に落ちない様子だった。
「……にしても、一体どう言う風の吹き回し?」
「何が?」
いきなり何を言い出すんだと言いたげにレジウィーダを見れば怪訝そうに睨み返された。
「だってアンタって……少なくともあたしが知る限りじゃ、他人なんてどーでも良いってくらい人に無関心無干渉だったじゃんが」
アンタの彼女と親友を除いて、と付け加えるのも忘れない。意外な話だったのか、シンクが興味を示したらしくレジウィーダの隣の椅子に座る。
「それが"こっち"に来てからは名無しの子供助けるわ、門前払い喰らった子供をこっそり教会に案内するわ、仕舞いにはアリエッタに態々お菓子を作って慰めに行くわだし」
「別に慰めたわけじゃ……」
「てか、思えば子供ばっかり!? アンタ、実は子供嫌いが行き過ぎて愛着沸いちゃった的な感じ!?」
「ンな訳ねーだろこのボケナス!」
そう言って拳骨をかまそうと拳を振り下ろしたが、寸前の所でかわされる。仕方なしにグレイは舌打ちをして拳を引っ込めた。
「ガキは嫌ェだし、それ以前に他人に構うなんて面倒だとも思ってる。……けどあいつらの場合、何故か無性に何かを言いたくなる」
「何故かって、なんだよ?」
「それは……」
そこまで言ってグレイははたとして首を傾げた。
「知らね」
「「はぁ?」」
予想外の返答にシンクまでもが声を上げた。
「知らねーモンは知らねーンだよ。ただ、何となく懐かしい気分になる。……それだけだ」
昔、やたらとお人好しな奴がいて、自分達に同じ様な事を言っていた……様な気がするだけ。
「意味がわからないんだけど」
「オレにもわからねーモンがテメェにわかるとも思えねェけどな」
「何だと!?」
ついに我慢の限界が来たレジウィーダが勢い良く立ち上がりグレイに掴み掛かる。しかし彼はヒラリとそれを避けると舌を出した。
「ホントのこったろーが、バァーカ」
「……シメる! 今日こそ絶対にシメたるわー!!」
待ちやがれこの大バカ男!
待てと言われて待つ奴なんていねーよ!
なら捕まえるまでじゃー!!
やれるもンならやってみな馬鹿女!!
ドタドタドタドタドタ……バタンッ
「……どいつもこいつも馬っ鹿じゃないの」
一人残されたシンクは荒々しく二人が出て行った扉を見てそう呟くと、テーブルの上に置きっぱなしにされた人形焼きを一つ手に取った。
「結局はアイツもお人好しって事じゃん」
本当に馬鹿馬鹿しい、と吐き捨てるように言っては手に持つ導師の形をした人形焼きを口に放り込んだ。
END