A requiem to give to you
- 預言に狂わされた緑(3/3) -



「え……?」



いきなり質問されるとは思わなかったのだろう。一瞬反応が遅れたそいつは意味がわからないと言った顔をした後、考える仕草をしてこう言った。



「全部貰っちゃうかなー」

「…………」













正直バカだと思った。いや、前々からそんな感じはしていたけど。全部貰うって……一体どうしたらそんな結論に辿り着くのやら。こいつの幼馴染みとか言う奴の言っていた通りこの女の考えは本当に理解が出来ない。……けど、



「何笑ってんだよ」



面白いと思った。一緒にいて飽きないタイプだ。…………でもね、現実はそんなに甘くはないんだよ。



「変な奴だね、アンタ」

「そうか? なら、他にどんな答えがあるってんだよ」



他にって、



「普通、同じモノがいくつもあれば一番良いモノ以外は捨てるだろ?」



その言葉にレジウィーダはハッとした顔になり強く肩を掴んできた。漸く事態に気が付いたらしい。



「まさか……」

「ねぇ、アンタは何で"ボク達"があの場所に捨てられようとしていたか、知ってるよね?」



ボクは導師サマの"なりそこない"。"導師イオン"と言う器を与えられなかった役立たずの人形。何者にもなる事も許されず、必要とされない人形……。そんなモノはいくつもイラナイ。だから捨てられた。



「ホント、空っぽってこの事だよね」

「シンク」



呟いたと同時に名前を呼ばれ、そいつを見れば静かな怒りを湛える瞳と目が合った。一瞬だけ背筋が冷えたような感じがしたが気のせいだろうか。



「君にそんな言葉を言わせた奴は誰だ?」

「誰って……」



そんなの、預言に決まっている。そもそも預言に奴の死が詠まれていなければボクが、ボク達が生まれる事もなかった。こんな思いをする事だって……。



「謝れせる!」



……は?

疑問を口に出す前にそいつは走り出していた。ボクはまだ何も言ってないんだけど…………それに謝らせるって、奴をか?



「………ふっ」



気が付けばまた笑っている自分がいた。本当にボクは変な人に拾われたらしい。

世界もボクが生まれ惨めな思いをした預言も憎いし、大嫌いだ。今のボクに名を与えたヴァンとか言う男はそんなボクに共に預言を壊さないかと言って来た。勿論それには大賛成だ。だからボクは今こうして奴と同じ顔を隠し、ヴァンの手駒としている。それは今も、そしてこれからも変わる事はない。でも……ただ終わりを迎えるより、ああ言う奇天烈な存在を見ているのも悪くはないと思った。

奴の指の跡が付いた所が未だに痛むが、直ぐに消えるだろう。落ちていた仮面を拾い、レジウィーダの駆けて行った後を歩き出した。












END
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