A requiem to give to you- 破滅を望む者(4/4) -
そいつが誰だかの検討はついてるのかい?
イオンが訊くとヴァンは頷いた。
「お凡その検討はついております。恐らく、カーディナル奏手指揮下にいた者共かと」
「…………………」
その名にイオンの表情が微かに曇ったのを見逃さなかった。カーディナルとは前に第六師団にいた男の名だ。そして彼や当然その指揮下にいた者たちも所属している第六師団には、イオンが数少ない信頼を寄せるカンタビレがいる。
どんなに周りを恨み呪おうとも、直ぐには断ち切れないモノもあると言う事なのだろう。イオンの表情はそんな思いがない混ぜになっている様な感じだった。
「ヴァン・グランツ謡将」
軍での称号付きで名を呼ばれ自然と背筋が張る。
「計画に支障を来す芽は全て潰せ。……いかなるモノも、だ」
そう言った彼の表情は窺えない。しかしこれだけは言える。
彼は人との絆よりも破滅を望んだと言う事を……。それ程までに彼の中にある憎しみは大きいと言う事なのだろう。例えその行為が相手への裏切りとなろうとも、もう直ぐ死に逝く彼にはどうでも良い事だ。
全てに絶望し切った彼には、もう他の選択肢を自ら選ぶ事は出来ない。出来るとすれば、滅び逝く世界を嘲笑う事だ。
それは何と悲しい事なのだろう。しかし、彼をそうさせたのは紛れもなく自分だ。後悔など毛頭もない。そもそもそれも計画の内だからだ。使えるモノならば異世界の者だろうと導師だろうと何でも使う。況してや導師自ら邪魔者の排除の命令を下したのだ。これを利用しない手はない。
だからヴァンは一言答えた。
「御意」
と。
本当に破滅を望んだのは、誰だ?
End