A requiem to give to you
- 水面下の警鐘(2/5) -



「障気の復活はしていた…………そして恐らくは、解決したンだと思う。ただ、どうやって解決したのかとかの経緯はわからねェ。わかるのは……………」

「わかるのは……?」



ルークが問えば、グレイはルークを見た。



「お前とアッシュが…………多分なんかした」

「た、多分……?」

「それくらいしかわからねェ」

「そ、そうか…………俺と、アッシュか………」



ルークはそう言って考え込む。同時にジェイドもどことなく厳しい表情をしながら思考するのに気が付いたが、それよりもヒースはグレイが気になった。

これ以上は何も出ないだろうと既に話題は変わり、タリスやレジウィーダ達と雑談を始めた彼の表情は至っていつも通りだ。ダアトで再会した時の罪悪感のような暗さは幾分か払拭されたようで一見安心………なのだが。



(あいつ………まだ何か隠してるな)



誰よりも長い事見てきた自信があるが故か、親友の些細な変化がわかってまうのだ。嘘を吐いている、と言うよりは敢えて言っていない……と言ったところだろうか。それは皆を気を遣っているのか、それともまた別の理由があるのか。

しかしいずれにしても、今はそれを言及する気はなかった。もしも本当に必要な事なら、今の彼ならば言ってくれるだろうから。



(……それよりも)



先程の話で少しだけ希望が見えた気がした。



(障気問題の解決は不可能じゃない。ルークとアッシュが関係しているのなら、恐らくローレライの力が関わっている可能性もある)



もしかしたらヒースやレジウィーダの方でも何か手伝える事があるかも知れない。そう思うと、少しだけ気持ちが向上するのを感じられずにはいられなかった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







音機関都市ベルケンド。アルビオールから降り、街の入り口へと来たルーク達は直ぐ様異変に気が付いた。



「何だ……?」



初めに声を上げたのはガイだった。彼の目線の先には一人の男性が覚束ない足取りで歩いている。白昼堂々酔っ払っているのか、なんて思いつつも、それにしては何だかおかしい。



「おい、何だか変だぞ」



続けられた言葉に皆も頷こうとした時、男性は足元から崩れ落ちた。それを見てティアとナタリアが慌てて駆け寄る。



「しっかりして下さい!」



男性の上体を抱え、二人がかりで治癒術をかける後ろからヒースも手伝おうと駆け寄る……が、彼は直ぐにハッとすると顔を顰めた。



「ど、どうしたんだよ?」



三人に追いついたルークが問うが、ヒースは首を横に振り、ティアとナタリアも悲しげに手を止めた。

ジェイドが男性の側に蹲んで脈を確認する。



「死んでますね」

「今の今まで動いてたのに……心不全的な?」

「いや、それだったらまだ助かる可能性もあったんだろうし、倒れてからの時間を考えても死亡と確定するには早ェだろうよ」



レジウィーダとグレイがそんな会話を交わしていると、街の方からキムラスカ兵が一名駆けてきた。彼らはナタリアとルークを目に止めると敬礼し、それから直ぐに男性の遺体へと目をやった。



「……これで今日は三人目だ」

「どう言う事ですの?」



小さく呟かれた言葉にナタリアが問うと、兵士は少しだけ言い辛そうに声を顰めながら答えた。



「実はここ数日、突然死が増えているんです」


あまりにも不自然な死。決して少ない数でもなく、初めは伝染病の類も疑ったがそうでもないらしい。昨今の障気のこともあり、街全体が不安に駆られているのだそうだ。



「死亡した人々に何か共通することはありますか?」



ジェイドが立ち上がりながら訊くと、兵士は思い出すように頭を捻らせた。



「はぁ………そうですね。年齢も性別もバラバラなのですが、ただ一つ。死亡者全員、ローレライ教団へ預言を聞きに行っています。それも最近になってです」

「ええ!? それは変だよ!」



と、アニスが驚愕した表情で否定した。



「今、教団では預言の詠み上げを中止してるんだよ! イオン様がそう決めた筈なのに……」

「いえ、この障気ってのが出てくるちょっと前から再開したみたいですよ」

「はぁ? ンな馬鹿なことあるかよ」



兵士の言葉にグレイもあり得ないと声を上げる。確かにあのイオンが今のこの預言への考えを改める流れを作る中で、一般市民への預言詠み上げを行うとは思えなかった。

しかし兵士は困ったように頭を掻くだけだった。



「そうは言われてもなぁ。実際に俺も詠んでもらいましたし」

「一体どこのどいつだってンだよ」

「詳しくはわかりませんけど、旅の預言士が各地を回ってるとしか………噂ではバチカルへ向かったとは聞いてますよ」

「それって……」



その言葉に皆の脳裏には一人の人間の姿が浮かんだ。一ヶ月前に地核へと消えたとされる………



「あの……この死体、片付けてもよろしいですか?」



一先ず男性の遺体を兵士に任せ、改めて街の中へと入った。それから道すがらに見つけた小さな公園へと入る。今は外が障気に溢れている為か、公園内には人一人いない。

しかし今は都合が良く、ルーク達は近くのベンチに腰を下ろしながら話を続けた。



「預言の再開と突然死、か。関係あると思うか?」



ガイが問えば、ジェイドは「あるでしょうね」とはっきりと返した。



「今のはフォミクリーでレプリカ情報を抜かれたのかも知れません」

「うん? どゆこと??」



どうしてそう繋がったのかがわからずにレジウィーダが首を傾げる。



「実験では、情報を抜かれた被験者が一週間後に死亡、もしくは障害を残す確率が三割でした。先程の方とフォミクリーの被験者の亡くなり方はよく似ています」

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