幼きゆえに 狂気を為す act13...植物に支配された少女 まるで子供のようですね、と。 淡々とした抑揚のない幼い声で。ロコは乾いた舌を転がし、ロランを謗った。褪めた震えをした喉に、彼がすくんだのが分かる。震えるように俯き、視線は地に這わされた。 「ごめんなさい」 小さな呟き。ともすれば轟音に消され、死んでしまうだろう。無辜を詠った咎人の断末魔は、ロランの心情など知らない。ただ己の愚かしさを吐き出しながら、汚く死に至るだけだ。 彼らは永遠に知らない。どうして殺されるのか。どうしてチェスが二度目の戦争を所望したのか。 無知なまま消える影は、積み上がっていった。哀れでありながら、憎悪の対象だ。感慨なくそれらを一瞥し、ロコは向き直す。 あれらよりも、この青年の方がよっぽど哀れだった。 例えば、その態度。俯いたまま更に深く、頭を下げられた。爆風が髪を揺らし、怯えた相貌を伝える。不可思議な光景だと言ったのは、ロコと天空のみであった。 萎縮した背丈は、それでもまだロコより大きい。青年といえる年齢でありながら、少女の影に許しを請う姿は滑稽だ。幼い左耳朶で鈍く光る装飾品は、白馬の瞳でこちらを見ている。絶大な力で無慈悲の雷を落とせる証だ。たった一人を呪いで冒すために、時を犠牲にするロコとは比べるべくもないその力。その気になれば何百の命をも、一息で土に返せる。 今のように。 「あの、僕、何かしましたか?」 疑問か、確認か。ロランより漏れた心の一片は、やはり脆弱だった。呆れる程に怯えた心根を振りかざしている。もしもロコが精神を見た目と共にしていたなら、苛立ってしまうだろう。 ロランは哀れに卑屈だった。魂の原形がこれであると思える程に。謙遜を過ぎて自己卑下を徹底する、愚かしい考えに支配されている。 それは、殺人を肯定しない。 しかし五感はそれを嘘だと糾弾した。ロランは今、眼下の町を蹂躙していた。爆ぜる岩石を操り、人々を虫けらのように殺すその姿。 人間性など欠片もない。身体を分解された人は、ロランをそう評すだろう。壊しているのが命ではないと錯覚するような徹底振りだ。 恨みも憎しみもなく、ただ殺す。 酷いじゃないか。自分の意思ではなく、人を殺すその背中。絶対の存在を崇拝し、自己すらも歪めた。ロコは諦念を覚えながら言った。 子供ですね、と。 |