せかいでいちばん
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act9...醜い人々


 嘲笑には慣れている。

 幼少の時分より、コウガは好奇と憐憫の対象だった。何もせずとも嘲られ、親からすらも哀れまれる。同輩の子供はコウガを笑い、道化にした。
 原因は明白だ。首に乗っかった、醜悪な顔である。悪意を持って作られたような、醜い顔。誰しもが目を逸らす造形は、コウガ自身にも愛せないものだった。
 悔しくて、憎くて、妬ましい。屈折した感情の行く先にあったのは、やはり嘲笑だった。

 嘲笑には慣れている。

 しかし、不快だった。この劣等感は、コウガと同じ顔を持つ者しか味わえないだろう。復讐のために選んだ組織の長が、整った顔立ちでコウガを笑ったのだから。
 儚い。そんな形容詞が付く、綺麗な顔だ。比類なき力を持ち、付き従う者もいる。コウガにとって憎むべき敵と同じか、それ以上に妬ましい人間だ。
 そんな男に忠誠を示さなければならない。鏡を見つめるのと等しい拷問は、コウガの表情を歪めた。呪詛でも吐いて、息の根を止めてしまいたい。衝動が果たされることはなく、コウガはまた笑われた。何が男を笑いに駆り立てるのかは分からない。しかし、コウガにとっては理由よりも、蔑まれているという事実が重要だった。
 殺したい。脳髄を埋めつくす言葉は、一つの顔を与えた。殺意と憎悪に満ちた、ひどく酷く醜い顔だ。
 怨嗟の瞳で男を射抜き、気づく。

男もまた、コウガと同じ顔だった。


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