この世界は歪だ。決して人の心を満たさない。狂っていると換言して、地獄と表現して、それでもまだ足りない。灼熱の溶岩で人類が焼かれようとも、世界は素知らぬ顔を続けるだろう。しかし当然のことだ。世界に心はなく、世界は人のために存在しないのだから。
 ここは単なる土台だ。ただ在るだけの地を世界と名付け、盲信している。己が居所から逃れられない弱者が、楽園という望みの果てに造った欺瞞だ。真実を見つめれば、狂っていると分かってしまう。

狂っている。
狂っている。
狂っている。

世界は狂っている。

ファントムから愛する人ばかり奪うのだから。

 人はそれを報いという。傲慢な王は討たれ、搾取する貴族は何れ財を失う。憎悪で他者を滅ぼせば、更なる憎悪が彼を襲う。報いは人の手によりもたらされ、歓声と共に迎え入れられる。からくりのように、歯車で出来た確かな仕組みでは決してない。人が、人のために描いた夢と希望だ。
 神は居ない。因果は善悪に無知だ。
 対価を求めるのは人ばかりだ。因果応報は偽りであるのに、誰も信じない。人の生死など、世界には預かり知らぬところだ。死とは単に死である。行いが悪かったから死ぬのではない。何かを象徴するでもなく、魂の在り方を問うでもない。ただ生きることの終わりとして、死があるだけだ。
 だからそれに理屈はない。理由を求めるだけ、無意味だ。

 それでもロランは「なぜ」と言った。なぜペタが死ななければならないのかと。


人はそれを報いと云う




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