死んだ死んだ
みんな死んだ


act*...物語の終焉を祝おうか


 荒野には一人だけ。

 命を持たないオーブは見てしまった。息の絶えた世界と、流動する宇宙を。燃える星は軌跡に光をあてがい、緩やかに世界を落ち行く。極星はオーブの行く手を遮るように、あるいは導くように照らしていた。帳の如く夜が降ろされた地平は、本来の拒絶を失っている。大地と空の境すらも星は溶かし、会わせたのだった。
 幾万もの光が空を覆っていた。たった一つの太陽に支配された空よりも美しく飾っている。大気すらも震わせる空は、恐怖と紙一重だった。
 生きとし生けるものの全てを溢した大地は、ただオーブだけに輝く星空を与えていた。その美しさに、悪意の化身であるオーブも感嘆の声を漏らす。星々の灯火は暗黒すらも染め上げていていた。目を凝らせば、そのまま夜空に落ちてしまえる気がした。

「なんと美しい」

 オーブは愉快だった。これ程の景色を独占できたから。長き世で幾人もの権力者が望み、叶えられなかった夢をオーブは実現した。絶景という言葉すら及ばず、人々が追い求めた贋物なんて無に帰するような綺羅星だ。それをただ一人、オーブだけが手にしていた。
 人間は滑稽だ。こんな綺麗なものを醜く奪い合うしかなかった。妬み、恨み、憎み、怒り、その果てに破滅したとは、なんと愚かしき種族か。
 オーブが伸ばした手から星は零れる。一個人に掴めるだけの量はとうに超えていた。

「ああ、美しい。美しい」

 じきに明けるのを恨めしく思いながら嘆息した。星河が干上がり星雲が晴れるその時は間近に迫っている。いずれ残される暁星は、立ち去る同胞を横目に何を思うのだろうか。

下らない疑問が胸を裂く。オーブは一人きりだった。


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