story
■ 舌の上で愛を溶かして

俺の部屋。リボーンがいない時を見計らって骸が来た。玄関から入れば良いのに毎回窓から侵入してくる。玄関からだと母さんやビアンキやチビ達がいるから色々と面倒ならしい。

(わからなくもないけど)


ベッドの上でうつ伏せに転げながら本を広げる骸はすっかりくつろぎモードだ。ちらりと横顔に視線を向けるともぐもぐと口を動かしているのがわかった。

「骸、何食べてるの?」

自分もベッドに身体を倒し、骸に寄り添う。

「アメ?ガム?」


「さて、何でしょう?」

本から目を離さずに骸は俺をからかう。


「俺にも頂戴。どうせ甘いものなんだろ?」


骸が読んでいる本の上に、ワザと右手を開いてねだる。

邪魔をされたら怒るだろうか?

俺を横目で見やると骸は本から手を離して頬杖をついた。

フフン。と鼻を鳴らし、偉げに俺を見下ろす。

「残念ながらもうありません。僕の口の中にあるので最後です。」

本当なのか嘘なのか、どっちともとれる感じが何かムカつく。

「それでも欲しいと言うなら仕方ない」


「は?」
なんだ、残り物あるんじゃん。俺はやっぱり騙されたのか…。
まったく―…。


「 」

文句を言ってやろうと口を開いたらいきなり頭を掴まれて骸の顔まで近づけられた。

驚いた俺は一瞬だけ息の仕方を忘れる。小さく開いたままの唇を、骸は自分の唇と重ね合わせる。柔らかく、それでもってしっとりとした感覚は互いの脳に甘い痺れを与えた。


キモチイイ。


骸は俺の唇を舐める様に舌を這わして味わっていく。もっと。もっと感じたいと俺の方からも舌をのばすと、先程まで唇を這いずっていたヌルリとしたモノがゆったりと絡み合い、同時にカカオの香りが口の中に広がった。

また少し形を保っているソレは、舌が絡み合う度に溶けていく。とろとろと口の中で消えていく。

甘いような、苦いような。


どちらとも区別できぬまま唾液と混じり合い、コクンと喉を鳴らして飲み込んだ。


俺の頭を抑えていた力は無くなり、代わりに優しく撫でられる。

キスの余韻に浸っていると、骸は悪戯に笑った。


「美味しかったでしょう?」


クフフ。と、独特なあの笑いを含ませて得意げ。

自分の唇についた僅かなチョコレートを舐めとる舌の動きは艶めかしくて、正直ドキッとした。


「もうほとんど無かった」


照れ隠しの言葉を吐き捨て、熱くなった顔と火照った身体は布団で隠した。


今はまともに喋れそうにない。


END.



(舌の上で愛を溶かして)



title by 確かに恋だった

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