「あなたの愛は重すぎる」

 二度目の大喧嘩に終止符を打ったのは、泣き出しそうな笑顔で吐き出された彼女のその言葉。そして次の日、彼女は忽然と姿を消した。
 それから一体どれほどの時間が経過したのか――あれ以来、私は自分でも驚くほど家に帰らなくなった。誇張でも何でもなく、彼女がいるというたったそれだけの理由が、私をあの場所に帰り着かせていたのだと思い知る。事実、彼女のいない今となっては、あの場所に帰る必要性も、意味も、価値も見出せない。
 舌打ちを噛み殺して、呼び出し音だけが虚しく響き続ける携帯端末の電源を落とす。暇さえあればこうして連絡を試みているものの、相変わらず彼女は電話に出ないしメールにも応えない。彼女は今どこにいて何をしているのだろう。やはり戦術予報士に復帰したのだろうか。私がやっとの思いで辞めさせた、あの職に。
 ああ、そうだ――忘れようもない。一度目の喧嘩の原因もこれだった。
 彼女が優秀な戦術予報士だということは私もよく知っている。だが、いつ何が起こるかわからないのが戦場だ。私は、私の力の及ばない場所で、どうしたって守ることのできない場所で、彼女が傷付くことが何より恐ろしかった。だから辞めさせた。確かに多少強引な手を使いはしたが、それでも結局、最後には彼女も首を縦に振ってくれた筈だったのに。それが何故。あんな顔をさせたかった訳でも、あんなことを言わせたかった訳でもないのに。

(ああ全く情けない彼女のこととなるといつだってそうだいつもの自信も矜持もまるで役に立たない)(姿が見えないことが声が聞こえないことが、こんなにも、苦痛だとは、)
(君は、どこにいる?)



あの日君の手を掴めなかったことを、今も後悔している
title:リライト

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -