穏やかな休日の昼下がり、暇を持て余したわたしは、コンビニか本屋か、とにかくどこかで時間を潰せないものかと考えて、とりあえずふらふらと家を出る。
 すると、わたしが玄関のドアを開くのとほとんど同時にお隣の玄関も開いて――中から出てきたのは、刹那だった。

「あれ、刹那、どこか出かけるの?」
「ガンプラを買いに行く」
「それ、わたしも一緒に行っていい?」

 わたしの言葉に、刹那は短く首肯。
 という訳で。この運命的な出会いによって、わたしは予定(と言っても、あってないようないい加減なアレだったけど)を変更して、刹那にくっついて近所のおもちゃ屋さんに行くことにしたのでした。

***

「刹那、何買うの?」

 物珍しさにきょろきょろするわたしを余所に、箱を手に取る刹那。そしてそれを横から覗き込むわたし。
 え、くし、あ? って、ああ! 刹那の好きなガンダムか。前に見せてもらったこともあるし、なんとなく見覚えがある気もする。と言っても、正直なところわたしにはガンダムという括り以上の細かい区別はイマイチついていないのだけれど。

「プラモデルって楽しい? わたしも何か作ってみようかなあ」
「なまえは初めてだから、あまり難しくないやつにした方がいい」

 とりあえず、わたしも手近にあった箱(刹那が持ってるのと同じやつ、か、な?)を手にとって眺め回していると、刹那が言った。
 「うーん?」。正直、わたしには違いがよくわからない。……それならそれで、わかる人に任せるのが無難か。「じゃあ、刹那に選んでもらってもいい? わたしも、気に入るのがないか探してみるから」。そう思ってわたしが返せば、「わかった」。刹那は頷いて、アテがあるのか別の棚へと向かって行った。わたしも、何か心惹かれるものはないかと棚を見て回ることにする。
 白とか赤とか緑とか、色もすごくカラフルだし、形だって、どこが違うのかわからないようなのからわたしにもわかるくらい全然違うものまで、本当に色々あるなあ……。

「やあ、なまえ。こんなところで会うとは奇遇だな」

 そんな風に、きょろきょろうろうろとガンプラを物色していると、聞き覚えのある声がかけられる。「あ、グラハムさん」。振り返った先のそのひとは、うちの学校の教師だった(更にわたしにとっては親戚でもあるので、今は身内用の対応である)。

「グラハムさんもガンプラ?」
「ああ。オーバーフラッグのみで航空部隊を編成する。なまえも一機どうかな?」

 既に会計を終えているらしいそのひとにわたしが訊くと、グラハムさんは、傍の棚から箱をひとつ取って寄越した。パッケージに描かれた機体は、漆黒のボディに華奢なフォルムのスレンダー系。ふむ、これがオーバーフラッグってやつか。

「このフォルム、美しいと思わないか? 燃料を基本骨格であるカーボンフレームを構成する炭素分子結合体内に分子レベルで浸透させることで、専用の燃料スペースも供給用のパイプラインも必要なくなった。徹底的に無駄を削ぎ落としたからこその形だな」
「へー……難しいことはよくわからないけど、確かに格好いいかも……」
「近接格闘特化機体らしい運動性に優れたシンプルなシルエット、尚且つ各部に装備された五種七本の剣−−『セブンソード』によって、その印象は大きく変わる。また、躍動感ある派手な戦い方から、ガンダムという存在を知らしめるプロパガンダ的な役割を担う機体でもある」
「あ、刹那」
「何より、SDガンダムはパーツが少なく初心者にも作りやすい」

 グラハムさんの講釈に耳を傾けている間に、刹那が戻ってきてくれていた。その手には、わたしのために選んでくれたらしいプラモデル。これもどうやらエクシアのようなのだけれど、何故か、二頭身くらいに可愛らしくデフォルメされていた。
 「なにこれ可愛い……!」。ああもうどうしよう。オーバーフラッグもすごく格好いいし、このエクシアもすごく可愛いし迷っちゃう……「あ、」。

「刹那! わたしこれにする!」

 −−結局。
 最終的に、わたしはオーバーフラッグでもエクシアでもなく、偶然目に留まったティエレン(地上型)を購入しましたとさ。


(だってこの正しく兵器然としたゴテゴテ無骨な重装甲、一見地味な深緑のカラーリング、それに何より背中のアンテナが可愛かったんだもん!)



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20110918
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