※大学生ニール×高校生ヒロイン


 放課を知らせるチャイムの音が響いて、わたしはそれこそ鼻歌でも歌い出しそうなくらいの勢いで、うきうきと帰り支度を始める。
 授業が終わったと言っても、今日に限って言えば結局はこの後の予定も勉強で、いつもならあまり気の進むものでもないのだけれど(そもそも、こんな殊勝なことはテスト前でもないとそうないのだけれど)、ニールさんが教えてくれるとなれば話は別だ(だって、たとえ勉強でも、少しでも一緒にいられたらそれがうれしい)。
 辞書が入っている所為で重たい鞄を片手に席を立ち、わたしは何となくケータイをチェックする。と、タイミングよくメールの着信。(……、! ニールさんだ!)。差出人を確認して、それだけでうれしくなってしまう自分に、単純だなあって少しだけ呆れたりもしながら、いそいそと本文をチェック。どうやらわざわざ迎えに来てくれたらしい。わたしはそれに手早く返信して、そして足早に昇降口へと向かった。の、だけれど。
 騒がしいのはいつものことにしたって、今日はこそこそと遠慮がちな黄色い声がやけに耳につく。あんな先生いたっけ、とか、えー誰かのお兄さんとかじゃないの、とか。それに対して、まさかと思いながら上履きを履き替え、校舎を出ると――ああ、ほら、やっぱり。
 昇降口の傍にある来客用の駐車スペース。見慣れた車と、それに寄りかかって立つすらりとした人影(なんでスーツなの?)。
 どう見たってそれは、わたしのよく知っている人だった。

「ああ、おかえり、なまえ」
「あ、うん、ただいま……じゃなくて! とりあえず、車の中、に、戻って!」
「なんだなんだ、そんなに慌てなくったって時間はあるだろ?」
「そうじゃなくて……ニールさん目立つから、目立ってるから、すごく! 特に女の子に!」
「大丈夫だって、そんな顔しなさんな。声かけてきた子には、ちゃんと彼女を迎えに来たって言っておいたから」
「なにそれ恥ずかしいなあもう!」

 なんとかニールさんを運転席に押し込んで、わたしも助手席側に乗り込む。このほんの僅かな間にすごく疲れた気がする……。

「ていうかね、そもそもなんでスーツなの……」

 そして、真っ先に疑問に思ったそれを口にすれば、「大学の方でちょっとな。仕方ないだろ、着替えに戻ってたら間に合わなかったんだよ」。そう言って、ニールさんは少し困ったように笑うと、片手でネクタイを緩める。

「俺だって、こうカッチリした格好だと肩が凝るっつーか、なんつーか……」
「あ、そういえば、ネクタイってどうやって結ぶの?」
「……おいおい。その制服のそれはネクタイじゃないのか?」
「あ、これはほら、こういう、」

 その様子を眺めながら、ふと気になってわたしが訊くと、呆れたようにわたしの胸元を示すニールさん。に、制服のネクタイを外して見せるわたし(なんだっけ、ボタンで付けたり外したりできるタイプのネクタイなんだけど、残念ながら名前が思い出せない)。
 すると、ニールさんは「あー」なんて納得したような声を上げて、それから、「ついでだ、それも教えるよ」と笑った。


(「なまえがネクタイ結べないと俺が困るしな」「え、なんで?」「なんでって……毎朝結んでもらうことになるだろ?」「?!!」)



今日も明日も明後日も、その先もずっとずっと ずっと
20110706
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