ふんふんと鼻歌混じりに廊下を歩いていると、「なまえ」と、だいすきな声がわたしを呼んだ。振り返ると、そこにいたのは――「リヴァイヴ!」。たったそれだけのことでどうしようもなく嬉しくなってしまって、わたしはすぐさま身体を反転させると、リヴァイヴの傍へと駆け寄る。

「カタギリ技術大尉と、随分親しそうにしていましたね?」

 真昼の月よりもやわらかに微笑んで、リヴァイヴはそう言った。いつもと同じその笑顔に、けれど、どこか違和感を覚える。それでもわたしはその違和感の正体が掴めず、ただ額面通りに受け取って言葉を返す。「あ、うん! あのね、わたしのガデッサの話をしてたの」。
 大切な大切な、リボンズがくれたわたしのガデッサ。この間の戦闘で少し壊れてしまったことが心配で、今日は格納庫に様子を見に行ったのだ。そしたら、カタギリさんが声をかけてくれて、わたしのガデッサやあの赤いのの話をたくさんしてくれた。ガデッサのことはよく知っていたつもりだったのに、まだまだ足りないみたいで新鮮だった。

「ふふ。今度、またちゃんとお話してくれるって、」
「それはよかった」

 リヴァイヴがわたしの声を遮る。やっぱりおかしい。「……リヴァイヴ? 怒ってるの?」。わたしが訊くと、リヴァイヴは小さく首を傾げた。「どうしてですか? 何か、怒られるような覚えでも?」。
 だって、脳量子波でわかる。こんなの、絶対、いつものリヴァイヴと違う。こんな意地悪な言い方をするなんて、まるでリジェネじゃないか。

「全く、君はいつも余所見ばかりだ」

 けれど、逆を言えばそんなわたしの思考だって、脳量子波を通じて全て筒抜け。気付けば、いつの間にか壁際に追い詰められていた。
 リヴァイヴのてのひらがわたしの頬を撫で、首筋を伝い、軍服の襟が寛げられる。「リヴァイヴ、」。取り繕うように咄嗟に口を吐いて出た言葉は、首筋に走る鋭い痛みに遮られた。
 「いッ、た……!」。どうやら噛みつかれたらしいと思い至ったときには、既にリヴァイヴは顔を上げていて、その表情はいつもと同じ、ひどく柔和な、

「――ああ、先程言っていた『次の機会』ですが、勿論、僕も同席して構いませんよね?」


(僕の知らないところで笑うことなんて許しませんよ?)



爪のひとかけらだって誰にもくれてなんてやらないよ
title:選択式御題
20110420
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