ベッドの上に半身を起こして、傍らに備え付けられた端末でデータ整理やら次のミッションのチェックやらをしていると、「なまえ姉!」。扉が開く音と同時に弾んだ声がして、それから、小さな影がわたしにダイブ。「ネーナ、」。その華奢な身体を受け止めてやると、ネーナは嬉しそうな笑い声を漏らした。 「ただいま、なまえ姉」 「ふふ、おかえりなさい。どうだった? あちらのマイスターさん達とは、仲良くできそう?」 「聞いてくれよ、姉貴!」 ネーナの赤いくせっ毛を撫でながら訊くと、ネーナが答えるよりも先に、続いてやってきたミハエルが不満そうな声を上げる。どうやら、あちらでもネーナは相変わらずのおてんばぶりだったらしい。ミハエルはネーナのことを本当に可愛がっているから、決してそんな風には言わないけれど。 わたしは少しだけ咎めるように、ちらりとネーナに視線を向ける。すると、それに気付いたネーナがぺろりと舌を出す。「……もう、ネーナったら困った子なんだから」。やっぱり、結局それ以上は何も言えなくなるわたしも、ミハエルのことを言えなさそうだ。 「ミハエル、ネーナ。あまり騒ぐな。姉さんの身体に障る」 なんて、そんなことを考えながらミハエルとネーナの話を聞いていると、最後にやってきたヨハンが二人を叱る。「「えー!」」。綺麗に重なる二人の声。「兄貴は心配しすぎなんだよ」「ね、なまえ姉だってもっとあたし達と話したいでしょ?」。そして、矢継ぎ早に不平を紡ぐ二人の連携に、わたしは思わず小さく笑ってしまう。 「大丈夫よ、ヨハン。最近は調子もいいし」 「ですが、」 「それに、こんなときじゃないと一緒にいられないもの」 更に言い募ろうとしていたヨハンも、わたしのその言葉に押し黙る。「……なんて、何もできないのに我儘かしら」。わたしはそんなヨハンの様子を窺うように冗談めかして続けた。 この子達はまたすぐに次のミッションの為に地上に降りることになるだろう。けれど、わたしはいつだってそれについて行くことができない。失敗作のわたしの身体は戦闘向きではないし、ここからの後方支援くらいしかできることがないからだ。本当は、長姉のわたしがしっかりしないといけないのにね。 「姉さんがそんな風に気に病む必要はありません」 「そうそう、姉貴はここでオレ達のこと待っててくれよな」 「あたし達、今のままのなまえ姉がだいすきなんだから!」 (ああでも、こんな出来損ないがこうして生かされてこの子達と出会えたことをこそ、わたしは喜ぶべきなのかもしれない) (……ありがとう)(だいすきよ) ずっとずっと傍にいてあなたと一緒に生きてゆくよ title:選択式御題 20110327 |