足の踏み場もないくらいに散らかし尽くした部屋の中、唯一の居場所である広すぎるベッドの隅にうずくまる。片割れにも見捨てられたミッシングピースのわたしは、出来損ないなのか何なのか、いつだってひどく情緒不安定だ。楽しいと感じた次の瞬間に突然涙が止まらなくなったり、訳もなく苛立って暴れたり、自分でもどうすればいいのか(どうしたいのか、)よくわからない。
 昔は、いつだってどんなときだってアニューが傍にいてくれたのに。リボンズとかリヴァイヴとか、他の仲間達だって優しくしてくれるけど、中でも、やっぱりアニューは特別だった。楽しいときやうれしいときは一緒に笑ってくれて、悲しいときや苛々しているときには抱きしめてくれた。
 優しいアニュー。だいすきなアニュー。それなのに、今、アニューはここにはいない。
 彼女は記憶を改竄されて、ソレスタルビーイングに送り込まれているのだ。本当は離れたくなんてなかったけど、リボンズの命令だから仕方ない。それに、わたしとアニューは塩基配列パターンが異なるタイプだから居場所まではわからないにしても、それでも、わたし達は脳量子波で繋がっている。だから、離れていても、(あくまで一時的に、だけど)アニューがわたしを忘れても、思ったほどさみしくはなかった。アニューがいない間もいい子にしていたら、帰ってきたアニューが褒めてくれるかもしれない、なんて、そんな打算もあった気がする。
 けれど、状況は変わってしまった。そんな暢気なことを考えている場合ではなくなった。
 ライル・ディランディ。ソレスタルビーイングのガンダムマイスター。わたしの大切なアニューを誑かす、ニンゲン。
 その存在を認識した途端、わたしは冷静ではいられなくなった。以前にも増してわたしの精神は不安定になり、部屋に閉じこもって、することと言えば泣くか暴れるか、今みたいにうずくまってぐるぐると思考を巡らせるか。
 まるでアニューの代わりをしてくれようとしているみたいに頻繁に様子を見に来てくれていたリヴァイヴだって、今はアロウズに――ああ、そうだ。いいことを思い付いた。今まで、どうしてこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう!
 わたしはベッドから飛び降りると、裸足のままで部屋を飛び出して、一直線に広間へと向かった。そこにある真っ赤なソファーには、目当ての人物が座っている。「リボンズ、リボンズ」。階段を駆け下りながらそのひとを呼ぶ。リボンズはゆっくりと振り返って、小さく笑った。

「わたしもアロウズに行きたい!」

 リボンズの足元に座り込んで、その細い脚に抱きつく。そうして猫みたいにごろごろとじゃれつくと、落とされたのは呆れたような溜息。それと同時に抱き上げられて、わたしは、そのままリボンズの膝の上に座らされた。

「やれやれ、君の出番はもう少し先だと言ってあった筈だけれどね」
「でも、わたしは今行きたいの」
「……仕方ないね。好きにしなよ」
「やったあ! ありがとうリボンズ大好き!」


(アニュー、アニュー)(わたしがガンダムをやっつけて、アニューを取り返すよ)(そしたら、またずっと一緒にいられる)(アニュー、)(もうすぐ迎えに行くからね)
(だいすきだよ、アニュー)(絶対に誰にも渡さない)



服もおそろい、アクセサリーだって。だから彼氏もおそろいでしょ?
title:リライト
20110305
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